WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第204回 インテル、ホワイトボックス戦略

2004/05/31 16:04

週刊BCN 2004年05月31日vol.1041掲載

 インテルがパソコン低価格による自社プロセッサやチップセット価格デフレに対処するため、再びホワイトボックスサーバーなどのシステム商品キットに力点を置く方針を固めた。インテルのホワイトボックス戦略は、デル、ヒューレット・パッカード(HP)、IBMなど有力システムベンダーとの良好な関係を維持しながら展開しなければならないという、常に二律背反の条件を突きつけられている。しかし、米国ホワイトボックス市場はパソコンに続いて、低価格インテル(IA)サーバーでも強い流れになった。2004年3月、米国ソリューションプロバイダ(SP)のベストセラーサーバー調査によると、第1位はホワイトボックス36%でデルなどブランド商品を圧倒している。

プロセッサ選択も自由に

 こうして、ホワイトボックスサーバーは、SPにとって極めて重要な商品となった。インテルは、よりSPに歓迎されるホワイトボックス戦略を策定するため、04年ラスベガスの「インテル・ソリューション・サミット」出席のホワイトボックスビルダー数百社の経営幹部と個別面談を行い、SPの意見を吸い上げた。その結果、インテルはXeon(ジーオン)、Itanium2ベースのホワイトボックスIAサーバー用のシャーシなしのベアボーンサーバーシステム発売を公表した。当システムはメモリ、プロセッサを搭載しないサーバーシステムだ。

 インテルはホワイトボックスではパソコンもサーバーも、競合AMDプロセッサのシェア上昇に苦労しているが、このベアボーンでも敢えてプロセッサなしとして、SPがインテルもAMDも自由に選択できる余地を残した。これはインテルがチャネル戦略で最近強調する「チャネルフレンドリー」精神を実証するためだ。ユーザーが必要とするハードやソフトだけを組み込むホワイトボックスはユーザーの満足度も高い。さらにベンダーブランド商品では価格競合も激しいが、ユーザー対応の一品仕様では価格競争も起きないので、ビルダーであるSPの利益率も高い。

 しかし、ビルダーにとって大きな苦労もある。ビルダーにとって最大の問題は、1システムの部品を調達するのに、数多くの部品ディストリビュータを探しまわらなければならないことであった。1、2の部品の手に入らないことで納期が守られないことも頻発していた。この部品の スポット的調達がビルダー最大の悩みであった。

 この数多くの部品を同時に調達するという悩みを解決するのが、ベアボーンシステムだ。これには必要電源も組み込まれ、ビルダーはシャーシ、メモリ、プロセッサだけを外部から調達すればよく、数多くの部品調達からビルダーを開放することになる。この調達手間を削減できるだけビルダーのコストも下がる。多くのインテルパートナーは、特にインテルが自社プロセッサをバンドルしないベアボーンを発売したことを評価する。しかし、あるビルダー幹部は次のように言う。「プロセッサ調達手間も省くため、われわれはプロセッサ込みでインテルからベアボーンを調達することになるだろう」(中野英嗣●文)

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