視点

ミニFM局を使った情報モラル教育

2004/10/11 16:41

週刊BCN 2004年10月11日vol.1059掲載

 パソコンやデジタルカメラなどIT機器とインターネットによって、“一億総クリエイター・一億総ユーザー”の時代になった。こうした時代にあっては、パソコンやITツールのリテラシー向上よりも、むしろクリエイターとして、あるいはユーザーとして身につけておくべき情報モラル教育が重要である。この観点に立って、これまで、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、特に学校での情報モラル教育に力を入れてきたが、次の対象として、地方自治体まで範囲を広げ活動を始めている。ここでは、FM放送用ワンマンDJシステムを使った島根県横田町の例を紹介したい。なお、ワンマンDJシステムとは、ACCS会員企業であるプロムナードが開発し、FM東京や大阪のFM802などの放送局で実際に使われている番組制作と進行を行うパソコンベースのシステムである。

 このワンマンDJシステムは、小規模な予算で設置できるミニFM局として運用し、まず、横田町にある小・中・高校での情報モラル教育に活用する。このシステムを使うのは、FM放送の番組作り、DJ体験を通じて、台本原稿やトークにおける表現の問題、音楽を選択する際の著作権の問題などを考えてもらおうという趣旨である。すでに横田町では、公聴会を開き、9月に行われた小・中・高校の校長会でも説明が行われている。公立学校での活用に先立ち、10月2日には島根デザインスクールでDJ体験として実践を行った。

 このように、学校における情報モラル教育を町とともに進めることで、町の情報化に貢献できると考えている。情報化の前提には、ソフト管理がある。町のソフト管理を確立することで、情報管理に向けた意識を高めることにつながる。また、ミニFM局を設置すれば、インターネットとの連携などを通じ町の情報を全国に配信することも可能だ。さらに、ミニFM局があれば、その設備を生かしてコミュニティFM局に格上げし、地域情報の受発信をより活発化させることにも道が開けるだろう。この横田町の例は、ACCSが、会員会社の技術を使いコーディネートすることで、地域の情報モラルの向上とともに、地域振興にも貢献しようとする試みである。この活動ではまだ緒についたばかりだが、今後、この方向でも推し進めていきたいと考えている。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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