息吹くXMLウェブサービス

<息吹くXMLウェブサービス>第1回 東京ガス・エンジニアリング 「GeOAP」サービスを拡販

2004/11/01 20:42

週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載

 東京ガスの100%子会社、東京ガス・エンジニアリング(TGE、廣岡武機社長)は、ガス管などの地理情報管理システムを応用したXMLベースのウェブサービスGIS(地理情報システム)「GeOAP(ジオープ)」のサービス提供を本格的に開始した。ジオープのサービスは、TGEのほか、ITソリューション事業を展開するイービストレード(寺井良治社長)が「ジオープパートナー制度」の窓口となり、サーバーの運用管理をソフト開発のイースト(久野幸雄社長)が支援し、3社共同で事業を推進する。パートナーとは、ジオープ仕様のアプリケーションやコンテンツを拡充して、通信事業者をはじめ企業向けにソリューション提供する。(谷畑良胤●取材/文)

ガス管管理システムを応用

■テキスト情報で地理的計算処理

 ジオープは、地下に埋設されたガス管などの設備を地理情報で管理するために東京ガスが30年前に独自開発したGIS(地理情報システム)「TUMSY(タムジー)」と、XMLベースのウェブサービスを融合したサービス。単に地図画像を送信するだけでなく、GISのアプリケーションを開発する基本機能をインターネット経由で提供する。

 ジオープのパートナーは、この機能を活用して、簡単にアプリケーションの構築ができ、カスタマーに対しソリューション提供できる。表計算ソフト「エクセル」にも簡単にGIS機能を付加することができ、地図を介さずに距離や方位といった地理的な属性情報を利用先に提供できる。テキスト情報だけで地理的な計算処理を行うため、東京ガス・エンジニアリング(TGE)ではこの機能を「テキストGIS」と名付けた。

 テキストGISは、任意に指定した2か所間の距離、自宅住所から最寄り駅名と駅までの直線距離、指定した範囲内に存在する施設の住所リストなどを文字情報で表示する新たなコンセプト。利用先から大量の住所データをネット経由で受け、解析した文字情報を送信する。地図が必要な場合は、目的に応じて、色のついた点の羅列で表現した「ラスター形式」の地図画像も表示できる。

 ジオープは、ウェブサービスの標準プロトコル「SOAP(ソープ)」技術を利用して、マイクロソフトの.NETで実装されている。利用方法としては、例えば、企業の事務担当者が社員の住所録を表計算ソフト「エクセル」で作成し、そのデータを一括して送り、自宅から最寄り駅まで距離を算出し、バス定期支給対象者を抽出したり、地図の指定範囲内の顧客情報を取り出してDMリストを作成する営業支援システムにも活用できる。

■パートナー制度もスタート

 東京ガスは4月、100%子会社のTGEを通じて、ジオープを商用サービスとして提供開始した。すでに、通信事業者をはじめとした企業やポータルサイトなどで利用が始まった。

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 タクシー業界を支援するサイト「タクシーサイト」は、乗車地点と行き先の2点間の住所を入力するか、乗車地点から最寄の駅を検索することで、おおまかなタクシー料金を算出できるサービスをジオープの経路計算機能を利用して構築した。また、パートナー企業の中には、カメラ付き携帯電話とQRコードを利用して、会社と最寄り駅の経路地図を表示するアプリケーションをジオープで実現している。

 TGEは、ジオープを拡販するため、「ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客情報管理)といった業務システムやアプリケーションを持つシステムインテグレータやソフトウェアベンダー、ISP(インターネットサービスプロバイダ)に対し安価な開発環境を提供する」(秋田義一・マッピング事業本部GIS推進部課長)ことを目的に、サービス開始と合わせて、「ジオープパートナー制度」をスタートさせた。

 年間契約料12万円でパートナー契約を締結し、ジオープを組み込んだアプリケーションを開発。企業にサービスを提供する代理店として販売に携わるほか、システムサポートを代行する。TGEは、ジオープの利用先から課金して、その利用料の一部をパートナーにキックバックする。パートナーには、ジオープ開発マニュアルやエクセル版開発補助ツール、セキュリティ環境も提供される。

■12月には全国地図にも対応

 東京ガスの営業エリアは首都圏中心。このため、ジオープの対応地図は現在、地図ソフトのアルプス社から提供された関東周辺地図に限定されている。ただ、12月には、国際航業、アルプス社、昭文社の3社が全国地図を提供する予定。「今後は、住所や目標物のマッチング率を向上させるほか、高速道路を加えた経路検索機能を充実させる」(TGEの秋田課長)と、順次、機能を強化していく方針だ。

 ジオープは、基本サービスとオプションを組み合わせた料金で提供。基本サービスは、利用する機能数に応じた3プランがあり、月額1万2000円から。オプションは、国際航業、アルプス社、昭文社の地図を利用する場合の追加サービスで月額1万2000円からの3プラン。秋田課長は、「携帯電話の無料通話分が付いた料金コースと同じで、一定利用回数まで定額制。超過分は従量課金制で利用料金が決まる」と、わかりやすい料金体系で提供先を広げたいという。

 GISの汎用ソフトは、一般的に10万円以上で市販されている。だが、高価で開発も難しく、大規模システム向けのアプリケーション開発には向いているが、中小規模の開発にはオーバースペック。半面、ジオープはマイクロソフトのプログラミング言語「ビジュアルベーシック・ドットネット」を使って簡単に開発でき、中小規模の企業や事業所向けアプリケーション開発が容易だ。企業の営業支援システム用に取り入れたいというソフトベンダーからの要請は多く、今後、医療や宅配便、小規模の防災地図などにジオープの用途は広い。パートナーの開発したジオープ仕様のアプリケーションが拡大しそうだ。来年度(2006年3月期)は、ジオープ事業全体で2億円の売上高を見込んでいる。(協力:.NETビジネスフォーラム)
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