総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って

<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>16.アタックス(中)

2005/02/21 16:18

週刊BCN 2005年02月21日vol.1077掲載

 OBCは、奉行シリーズのASP(アプリケーションの期間貸し)サービス化は「先進事例」(OBCの石原徹・営業部名古屋支店支店長)と、経営コンサルタント会社のアタックス(丸山弘昭社長、愛知県名古屋市)が取り組む財務会計ソフト「勘定奉行シリーズ」のASPサービスを高く評価する。今後は、財務会計に加えて人事管理ソフトのASPサービス化も視野に入れる。

人事管理のコンサルにITを活用

 複数のグループ企業を持つ企業が、財務会計や人事給与などの情報システムをASP方式で子会社に提供するケースは多い。名古屋地区でも、グループ企業内や関連会社同士などのASP方式による事例はすでに20件を超えている。だが、経営コンサルタント会社が奉行シリーズを使って顧客企業にASP方式で財務会計システムを提供する事例は非常に希なケースだという。

 例えば、親会社が子会社に財務会計ソフトの機能をASP方式で提供する場合、ASPサービスを受ける側の財務情報は財務会計ソフトのサーバーを管理する親会社のところにある。子会社の財務情報は、いずれ親会社へ報告することになるため、サーバーを親会社に置いても「抵抗感はほとんどない」(OBCの米本英司・営業部名古屋支店システムコンサルタントリーダー)という。

 だが、グループ外の企業に財務会計に関わるサーバー管理を委託するには「顧客企業との信頼関係が大切」(同)と、アタックスグループが顧客企業と密接な信頼関係を築き上げていることが、ASPサービス拡大の原動力になっていると話す。経営コンサルタント会社にとって、顧客企業の最新の財務情報をオンラインで閲覧できれば作業工数の大幅削減が可能になり、本業である経営コンサルティングに専念できる。

 アタックスグループでは、顧客企業がITを活用して経営を効率化できるよう財務会計ソフトなどの業務アプリケーションの普及促進に努めてきた。今後は、財務会計ソフトに加えて、人事管理ソフトを使った経営改革の支援にも力を入れる。すでに、2003年頃から専門能力やリーダーシップ、問題解決力など多方面から社員を評価する「多面評価システム」の構築に取り組んでおり、人事の専門知識を持ったコンサルタントが顧客企業に対してさまざまな助言をしている。

 これらの助言に基づいて集められた人事情報は、主に社員の成長のために役立てられる。「社員が成長していくために、どこを改善すればいいのかという“気づき”を与えられる人事を重視する」(アタックスの丸山社長)と、社員自身では気づきにくい長所や短所などを多面的、総合的に評価し、社員1人ひとりをさらに成長させるための人事政策を打てられるよう支援する。

 一方、OBCは人事管理システム「人事奉行シリーズ」の中堅・中小企業向けのスタンドアロン版を今年1月17日に販売を始めた。これまで、中堅以上の企業向けの人事管理システムは製品化していたが、中小企業までカバーできるスタンドアロン版のシステムを投入するのは今回が初めて。アタックスグループの顧客企業約1200社の多くが中堅・中小企業が占めていることを考えれば、価格の安いスタンドアロン版は適している。

 人事管理についても、財務会計と同様にIT化が進むことで、顧客企業の経営革新に大いに役立つとアタックスグループでは考えている。単に奉行シリーズを使うだけでなく、顧客が入力した情報を、アタックスグループの財務や人事などを担当している専門コンサルタントが分析することで、より早く的確なアドバイスが提供できる。人事情報についても、アタックスグループの多面評価システムとリンクさせれば、顧客企業の人材育成や活性化に役立つ仕組みづくりが可能だ。

 アタックスグループでは、人事の多面評価に関するノウハウを持っており、OBCでは人事管理分野においてもアタックスグループとの連携に力を入れていく方針を示す。「人事奉行とアタックスグループの多面的に評価する人事コンサルティングサービスとをうまく組み合わせて、より付加価値の高いサービスを展開できるよう取り組む」(同)と、人事管理に関するOBCのソフトウェア技術と、アタックスグループのコンサルティングノウハウの相乗効果を狙う。

 また、財務会計ソフトと同様に、人事管理ソフトについてもアタックスグループのようなビジネスパートナーを経由して、ASP方式でのサービス拡大も視野に入れる。今回投入したスタンドアロン版は中堅・中小企業向けのパッケージでの販売に適しているが、業務効率をより高めるためにASPサービス対応の人事奉行シリーズの拡販にも力を入れる。

 OBCでは、自社製品の拡販に向けて、アタックスグループのような経営コンサルティング会社や会計事務所などとの連携を強化している。次回はその取り組みを検証する。(安藤章司)
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