息吹くXMLウェブサービス

<息吹くXMLウェブサービス>第6回 グレープシティ C/S方式から脱却し、ASPサービスへ

2005/04/04 20:42

週刊BCN 2005年04月04日vol.1083掲載

 パッケージソフト開発のグレープシティ(ダニエル・ファンガー社長)は、XMLウェブサービスによりクライアント/サーバー(C/S)方式からの脱却を進めている。同社は、私立学校や私立幼稚園向けの業務パッケージソフト「レーザーシリーズ」を開発・販売しており、これまで全国の私立学校や幼稚園全体の約4分の1に相当する約2500か所に納入した実績を持つ。これまでは、C/S方式による納入が中心だったが、今後はXMLウェブサービスをベースとしたASP(アプリケーションの期間貸し)サービスへと軸足を移す。(安藤章司●取材/文)

収益の安定化に貢献

■私立学校向け製品を順次開発

 グレープシティは、2003年12月にXMLウェブサービスの技術を全面的に採り入れたパッケージソフト「レーザー〈学校会計〉」の販売を始めた。XMLウェブサービスを実現するプラットフォームには、マイクロソフトの.NETフレームワークを活用した。

 04年1月には、学校や幼稚園での生活風景や運動会などの行事を撮影した写真を、保護者がインターネットで閲覧し、プリント注文できるサービス「レーザー〈Photo Board〉(フォトボード)」を投入。続いて、今年1月に「レーザー〈教務〉」、今年3月に「レーザー〈学校給与〉」を新しく投入した。いずれのパッケージソフトも、XMLウェブサービスを使ったASPサービスに対応しており、顧客である私立学校・幼稚園は既存のC/S方式と新しいASPサービスとを選択できるようになる。

 ASPサービスに対応した新しいレーザーシリーズは、既存製品と区別するため「レーザーサービスシリーズ」へとシリーズ名を変えた。C/S方式によるパッケージソフトの売り切りのビジネスモデルから、「ASP方式によるパッケージソフトの機能を販売するサービス」(宮根崇容・レーザー事業部東日本営業&マーケティング部部長代理)として位置づけが大きく変わった。今後もASPサービス化を進めていく方針で、ここ1-2年の内に、学費管理や資産管理、人事管理など、順次「レーザーサービスシリーズ」の製品群を開発していく。

■セキュリティ面でも安全性高まる

 グレープシティがC/S方式から脱却し、XMLウェブサービスをベースとしたASPサービスへと軸足を移す背景には、ASPサービスならではの特徴が、顧客に大きなメリットをもたらすと考えているからだ。

 財務会計や人事給与システムなど業務アプリケーションは、会計制度の変更やユーザーの要望による機能の追加などの手直しが毎年のように発生する。

 ASP方式に移行すれば、財務会計ソフトの中核部分はグレープシティかビジネスパートナーが管理するデータセンターに格納される。会計基準の変更時は、データセンターのビジネスロジックを変更するだけで済む。顧客先のクライアント端末には変更を加える必要はない。

 また、レーザーサービスとしてASPサービス化した業務アプリケーションは、通常のインターネットブラウザさえあれば、どこからでもアクセスできる。幼稚園や高等学校、大学など複数の教育施設を運営している学校法人は、各学校から集まる財務データを本部で一括管理したり、外部の会計士や税理士がインターネットを使って財務の指導を行うことも容易に実現できる。

 業務アプリケーションの中核部分を堅牢なデータセンターに格納しておけば、コンピュータウイルスなどの脅威を遮断でき、情報セキュリティ面でも安全性が高まる。大規模な大学など自前で情報システム部門を持つ顧客は、学内のデータセンターにレーザーサービスを導入し、ASP方式で学内のユーザーに業務アプリケーションを提供する方式を選択することも可能にする。こうしたケースでも、重要なデータがクライアントに分散することなく、サーバーで集中管理できるため、従来のC/S方式に比べて、情報セキュリティの安全性が高まる。


■月額利用料を払うレンタル方式で

 グレープシティでは、XMLウェブサービス対応のレーザーサービスシリーズ「レーザー〈学校会計〉」販売開始に先立ち、C/S方式による既存の業務アプリケーションを“レンタル”する契約形態を推奨してきた。通常の業務パッケージソフトは売り切りの販売形態が主流だが、ASPサービス化を早くから視野に入れてきた同社では、顧客がスムーズにASPサービスに乗り換えられるよう、既存製品についても月額利用料を支払うレンタル方式での販売を進めてきた。

 こうしたレンタル方式でのレーザーシリーズのユーザー数は約500か所あり、今後、ASP方式によるレーザーサービスシリーズの品揃えが増えるに従い、C/S方式からASP方式への移行が「急速に進む」(宮根部長代理)と予測する。今年度(06年3月期)末までには、全ユーザー約2500か所のうち2-3割はASP方式へと移行すると同社では見ている。

 すでにレンタル方式で契約しているユーザーは、特別な導入コストを支払うことなく、従来通りの月額利用料を支払う方式で、最新のASP方式による業務アプリケーションに切り替えられる。そのため、移行への障壁が「ほとんどない」(李軍・関東支社レーザー開発第一部部長)のが移行がスムーズに進む要因になると考える。

 XMLウェブサービスに対応するなど拡張性を高めたレーザーサービスシリーズは、これまで比較的納入数が少なかった大規模な私立総合大学への販売にも力を入れる。C/S方式によるレーザーシリーズは、高等学校や幼稚園など中小・中堅の学校法人に納入する比率が多かったが、新シリーズは拡張性が高まったことから、より大きな組織を持つ私立学校にも対応できるという。

 現在、レーザーシリーズの販売では、直接販売が全体の約7割、全国約10社のビジネスパートナーを経由した間接販売が約3割を占めている。月額利用料をベースとした脱C/S方式は、ビジネスパートナー各社にも急速に浸透しているという。西日本地区の営業を担当する玉井潤也・大阪支店支店長は、「中国地区のビジネスパートナーのなかには、すでに自社のデータセンターにレーザーシリーズを導入し、複数の顧客にASP方式でサービスを提供している」と、ビジネスパートナーが中心となったASPサービスもすでに始まっていると話す。

 ASPサービスは、月額利用料という安定的な収益が見込まれることから、ビジネスパートナーからの反応もいい。今後もXMLウェブサービス技術を活用した脱C/S方式を進め、顧客の利便性の向上や情報セキュリティのより一層の強化、レーザー事業およびビジネスパートナーの収益の安定化を推進する。(協力:.NETビジネスフォーラム)

 .NETビジネスフォーラムでは、グレープシティのセミナー「.NET Framework採用でユーザーへの新たな提案を実現したレーザー〈学校会計〉システム」を4月13日(水)15時00分-17時00分(開場14時30分)、マイクロソフト新宿オフィス11Fマイクロソフトテクノロジーセンターで開催します。詳しくはhttp://www.dotnetbiz.jp/まで。
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