フレッシュマンセミナー ITの常識

<フレッシュマンセミナー ITの常識>6.米IBM、パソコン事業を売却

2005/05/16 16:04

週刊BCN 2005年05月16日vol.1088掲載

 昨年12月、米IBMは自社のパソコン事業を中国のパソコン最大手である聯想集団(レノボグループ)に売却すると発表。IT業界に衝撃が走った。

 これによってレノボグループのパソコン年間売上高は約130億ドル、出荷台数約1400万台となり、ガートナーグループが2005年1月に発表した04年世界パソコン市場におけるベンダー別出荷台数(暫定値)にみるデル3099万5000台、ヒューレット・パッカード(HP)2756万7000台に次いで世界第3位に躍り出た。レノボグループが支払う買収額は12億5000万ドル(約1300億円)で、さらに約5億ドルの負債も米IBMから引き継いだ。一方の米IBMもレノボグループの株式の約18.9%を取得、第2位の株主となった。

 この時、国内大手メーカーは、「パソコン事業の利幅が小さい昨今、事業単独の利益追求にこだわる米IBMだけに、このことは予想していた」、「低調とはいえパソコン事業はエンドユーザーとの橋渡し的な役割があり、まだまだ重要」など、比較的冷静にとらえていた。

 しかしデルの人気に象徴されるように、現在のユーザーの志向は低価格でシンプルなパソコンへと向かっている。しかも、レノボグループは低価格戦略で成長してきた企業。市場での価格競争はさらに激化しそうだ。それだけに国内メーカーの、例えばテレビ搭載機能搭載ノートパソコンにみる高級志向など、新しい戦略が注目される。

 5月1日、レノボグループは当初予定よりも早く買収手続きを完了。数週間以内の新製品投入を明らかにした。また日本アイ・ビー・エム(日本IBM)本社内に日本法人レノボ・ジャパン(向井宏之社長)も設立、日本IBMからThinkPadの研究開発部門を引き継ぐなど営業活動を開始した。グローバルに認知されたブランド力を旗頭に、世界第3位のパソコン企業が本格的に発進する。(真実井宣崇)
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