未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>55.チアル・アンド・アソシエイツ

2005/12/05 20:43

週刊BCN 2005年12月05日vol.1116掲載

利便性を損なわない情報漏えい対策ソフト

 チアル・アンド・アソシエイツ(井川修治代表取締役)は、ユーザーの「利便性を損なわない」情報漏えい対策ソフトをコンセプトに、「Secure Filer (セキュア・ファイラー)」を自社開発した。使いやすさと低価格が中小企業に評価され、大手ベンダーがひしめき合う情報対策ソフト市場に食い込んでいる。

 セキュア・ファイラーは今年2月の発売で、他社に比べ後発。加えて、同社は03年7月設立のベンチャー企業で実績も知名度もない。それでも導入顧客は約30社、クライアントは4000ユーザーを超えた。今年度(06年6月期)末までに1万3000クライアントの突破を狙うと強気だ。

 セキュア・ファイラーは、データをファイルサーバーから一切持ち出させないことがコンセプト。クライアントコンピュータにデータをコピーすることができず、データの閲覧・編集はすべてファイルサーバーのなかで完結させる。「シンクライアントのコンセプトに似ている」(井川代表取締役)という。

 コピーを一切禁止することで、万一、パソコンを盗難・紛失した場合でも、情報が漏れる心配がないわけだ。エンドユーザーは、専用ソフトからID・パスワードの入力、そして認証専用のUSBキーを差し込むことで、データの格納されているサーバー内にログインできる。

 「編集はできるが、印刷はできない」など、各ユーザーに与えられている権限内容がログイン画面で確認できるため、「混乱が発生しない」。また、権限内容の変更をシステム管理者だけでなく、クライアントユーザーが自分で行えるようにしたこで、利便性を確保した。

 「セキュリティを高めれば、利便性は損なわれるし、利便性を高めればセキュリティレベルが低下する。そんな製品ばかりだったので、クライアントユーザーの利便性を維持しながら高いセキュリティレベルを確保できれば売れると感じた」と、開発の狙いを話している。

 低価格も売りだ。価格は1クライアント1万5000円で、1サーバー30万円。100クライアント以上であればサーバーライセンスは無料で提供する。「競合製品に比べ約3分の1で導入できる」という。

 12月中旬には30人以下の中小企業向けに、サーバーライセンス不要の新製品も投入する計画。中小企業をターゲットとする戦略をさらに加速させる。

 当面はセキュリティ対策を軸に事業展開するが、将来的には、グループウェアやIT資産管理ソフトなどより幅広い分野の製品も投入する。(木村剛士)
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