ソフトウェア開発で利益を上げるには、納期を守り、開発コストを下げ、品質を高めることしか方法がない。品質もコストも納期も、これを決めるのは開発要員の能力である。

 KDDIの情報システム開発等を指導した元ユニシスの手島歩三氏は、ソフトウェアの開発要員の能力差は、質を無視しても20倍あり、質を考慮すれば無限大の差があると主張している。これについて信頼できる調査は行われていないが、この事実を否定できる人もいない。

 要点は、このような大きな能力差のもとでは、マネジメントは通常のものと大きく異ならざるを得ないということだ。

 ある仕事をするのに1時間で済ませる者と20時間かける者がいるのである。そして、20時間かかる者が多数であり、1時間で済ませられるものはごく少数であることも、容易に予想できるが、その分布はだれも知らない。開発時間はコストに直接関係するが、有能な開発者がチームに含まれるかどうかで、大きく結果が変わってしまう。開発を成功させるには、「有能な開発要員」が含まれるかどうかを確認することから始まる。次に、最も有能な人材にどんな仕事をさせるかが、開発の成功に大きく関係することになる。

 一方、多数派の「有能でない要員」に何をやらせるかも成否に大きくかかわってくる。彼らが開発に何らかの寄与をすればよいのだが、バグフィクスを必要とする負の寄与をする場合が多い。

 この場合、その後仕末を有能な開発要員が行うことになる。実は、こうした仕事が有能な要員の仕事の多くを占めるケースがかなり見受けられる。このような後向きの仕事に追われて、有能な人材が疲弊して業界から去っていく。

 日本で行われる開発プロジェクトで、要員の能力把握とそれに基づく仕事の割り振りに、どの程度の時間資源が投入されているか不明であるが、赤字プロジェクトが多いことから、この部分に問題があるのではないかと予想される。

 そもそも開発人材の能力評価とその分布が調査されていないことが問題である。私は第一歩として、5時間程度実際に開発作業をさせて、そのプロセスと成果物を評価することで、人材を見分けることができると考えている。こうした開発要員の評価をやってみようという経営者も現われてきた。これが成功すれば、赤字プロジェクトの多くは追放できるのではないだろうか。