SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>【番外編:ITコスト削減の挑戦】44.長崎県(3)

2007/04/09 20:37

週刊BCN 2007年04月09日vol.1182掲載

OSS活用でコスト削減

独自開発で運用費8割減も

 コンピュータメーカーへの偏重発注体質の脱却を標榜し仕様書作成の自前化などでコスト削減施策に挑戦、順調に成果を出している長崎県。その取り組みとして、OSS(オープンソースソフトウェア)の積極活用も成果につながった。

 高額なライセンス料がかかる商用ソフトよりも、ソースコードが無償公開されているOSSを積極的に活用することで、システムの初期コストと運用コストを下げる方針を明確に定めている。

 例えば、電子申請サービスを提供するシステム。住民からの電子申請を受け付け、内容をデータベースに保存、電子決裁して住民に通知する一連のシステムは、大半がOSSでつくられている。2004-05年の2年間かけて再開発した。

 アプリケーションサーバーは「Tomcat」、データベースは「MySQL」、ウェブサーバーは「Apache」というように、必要なソフト群をほぼOSSで構築。メーカー製品を活用しているのは、電子申請で使う「電子署名検証ツール」と住民への通知文を送付する際に必要な「署名付与機能」ぐらいだ。

 すべてがOSSではないが、グループウェアも一例だ。

 長崎県は、松下電器産業グループのソフト会社が開発した、メールとグループウェアの機能を兼ね備えるソフトウェアを活用していた。年間の運用コストは3050万4000円。数年間活用していたものの、メール量が膨大になったのを機に方針転換。メール機能をグループウェアから抜き出して「qmail」の使用に切り替えた。同時にスケジュール管理機能などに特化したグループウェアを新たに導入した。これにより、新システムの年間コストはメールサーバー賃借料574万5000円と新グループウェア賃借料1395万8000円の合計1970万3000円に削減することができた。

 従来のソフトで運用していた時に比べて35%のコスト削減だ。その後、07年には、開発言語「Curl」を活用してグループウェアを独自開発。運用コストは従来比で81%も圧縮している。

 地場企業は開発案件を受注するため、OSSに関して先進的に取り組むようになった。地場のITベンダーは今後のシステム開発には必須となるOSSの知識を身につける意識が高まり、長崎県はコストを削減できる。OSSの活用により、両者がメリットを享受できる仕組みが整ったのだ。(木村剛士●取材/文)

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