視点

「セカンドライフ」は二重人格者養成機関!?

2007/07/02 16:41

週刊BCN 2007年07月02日vol.1193掲載

 定年を迎え、第二の人生をいかに過ごすか。故郷で農業に従事するもよし。ボランティアで社会奉仕活動に参加するもよし。しかし、この世はとかく住み難い。人間関係のしがらみも複雑だ。そんな人生をリセットして別の人生を生きられたら、どんな人生にしますか。

 そんな馬鹿な話があるか、と思われるかもしれないが、ネットの世界ではそれが可能なのである。いま話題のバーチャルワールド、「セカンドライフ」というサイトである。そこではまったく別人格で行動でき、別の人生が送れる。

 サイトに参加すると、年齢、性別、人種などを自由に選択でき、アバターと呼ばれる人物画像が割り当てられる。

 私も参加してみた。最初は赤ちゃんと同じで服がない。裸のままうろうろしている参加者がたくさんいる。キーボードの矢印キーでサイトの中を動き回ることができる。サイト内には現実世界と同じような施設がたくさんある。

 不動産屋もあり、土地を買うことができる。買った土地に建物を建て、商売をすることもできる。それでン億円ももうけた人がいるともいわれる。サイト内で流通するリンデンドルというおカネがある。クレジットカードを登録すると入手できる。稼いだリンデンドルを現実のドルと交換もできる。マネーロンダリングに悪用される恐れもあるから、米政府は規制することも検討しているらしい。

 通りがかりの人やお店の人から声がかかる。チャット機能を使って会話をする。別人格で参加していると二重人格を演じなければならない。常にウソをつくことになる。ウソを続けるのは、普通の神経の持ち主にはけっこうつらい。

 このサイトには世界で750万人が参加している。まだ英語バージョンだけだが、日本語サイトが開設される予定だ。ただ、ゲームに慣れていない中高年には使いにくい。面倒くさいし、何が楽しいのか分からない。日本では普及しないのではないか、と思っていたら、サンケイ新聞とトランスコスモスなど3社が日本型セカンドライフ、meet meを年内にもスタートさせると発表した。こちらは現実世界の地図と連動させ、よりリアリティーを持たせるそうだ。

 いずれにせよ、大部分の参加者は別人格でこの世界を楽しむことになると思われる。とすると、そこは二重人格者を養う場となり、ウソつきや詐欺師のたまごを大量に生産する場ともなりかねない。くわばら、くわばら。
  • 1