九州地区は沖縄県と並んで地震が少ない地区として、ここ数年、データセンター(iDC)やコールセンターの立地が相次いでいる。首都圏大手企業などの「バックアップセンター」としての役割を果たすとともに、これに付随してIT産業が活気づいている。一方、製造業の進出も盛んで、組み込みソフトウェア開発の需要は、開発者の供給が追いつかないほどに増している。(谷畑良胤●取材/文)

「バックアップセンター」化が進む
組み込みソフト開発は供給追いつかず

■地元技術者の大量誘引は困る 利害調整でコールセンターに

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 九州地区はここ数年、データセンター(iDC)やコールセンターの新設が相次ぐ。比較的地震が少ない九州地区に対する注目度が高まり、首都圏の大企業などが「災害対策」や「事業継続」の一環として、サーバーなど一部システムを分散配置する動きが活発化しているのだ。

 北九州市が港湾、空港に次ぐ「情報の港」を整備する「e─PORT構想」に乗じて、11月初旬には、ソフトバンクIDC(東京)が、鉄鋼会社の跡地に企業サーバーの運用を代行するiDCを建設すると発表するなど、進出が加速している。

 長崎県には4年前、AIGエジソン生命保険が全国の「コールセンター」を同地に移管・集約した。運営規模は約2000人。同社は当初、県や市の助成金制度を適用し、200人程度の技術者を現地採用する計画を立てた。しかし、地元ITベンダーの任意団体である長崎県情報産業協会(会長=石橋洋志・オフィスメーション社長)は、「地元から優秀な技術者を200人取られると、地場ITベンダーが疲弊する」(石橋会長)と、同協会と協議しながら人員をバックアップする体制を敷いたようだ。こうした「細かい課題はあるが、iDCやコールセンターの誘致は先行き楽しみ」と、地元IT産業が冷え込むなかで期待を込める分野である。

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 石橋氏が社長を務めるオフィスメーションは数年前から、自社ビル「電脳BLD」のiDCを増強してきた。当初は「首都圏のメインサーバーのホスティング/ハウジングを呼び込むため」だったが、実際は、その当てが外れたようだ。現在は「ニーズが高まる首都圏企業の『バックアップサーバー』の誘致を加速するため、市当局などと連携を深めている」(石橋社長)。同社は、地元にある中規模病院関連のシステム開発・構築に強みをもち、売上高の約4割を占める。病院関連の制度改正も重なり、億単位の案件獲得が相次ぎ決まった。この先は、診療所など小規模病院向けにiDCを活用したASPなどで、新規案件を開拓していく考えだ。


 佐賀県では、2003年に地元ITベンダーや有力企業の共同出資による「佐賀IDC」が設置されている。同社の筆頭株主である佐賀電算センター(宮地大治社長)は、「最初は、地元企業や自治体、公共団体などの誘致に成功した」(下村宗治・専務取締役)。しかし、地元企業が少ない同県の実情を考慮すると、「このままではじり貧になる」と、長崎県と同じく首都圏や九州地区の企業からバックアップセンターとしてのアピールを開始。誘致活動を積極化しているという。

 全国の地域で活躍する地場ITベンダーと同様に、佐賀電算センターもiDC事業以外でも全国への進出を開始した。下村専務は「全国的なITベンダーのやり方は、コスト高を嫌う地元企業に馴染まない。当社は、こうしたITベンダーに比べてサービス力に勝り、地元企業のシステムを今後も支えていく。ただ、コスト要求がきついので、収益率を高めるには全国に進出することが必要になるだろう」と語る。

 同社は、関連会社に医療系システム会社のメディックを抱えているため、社会福祉の分野に一日の長がある。自社開発の「障害福祉サービス事業者管理システム」は、使い勝手の良さが評価され、23道府県が採用する全国トップシェア製品になった。「地元企業のシステム開発で培った技術力を基にニッチ(すき間)分野に特化すれば、全国進出はできる」と、同システムなどを対照に、より案件数を増やすため、ASP事業の検討を開始した。

■地方の中小企業が抱える悩みを解消するアプリケーション提供

 九州地区で業務アプリケーション開発を主体に事業展開するITベンダーが県外の「外需」に視線を向ける一方、組み込みソフトウェア開発の分野に強みをもつITベンダーは「内需」に沸いている。ここ数年、九州の工業立地が件数、敷地面積ともに増加傾向にあるためだ。自動車や半導体・液晶関連、家電などの進出が続く。

 福岡県に本社を置く独立系ITベンダーのソフトサービス(野見山章社長)の波多江章二・取締役事業部長は「当社では、家電や自動車、半導体の組み込みソフト開発需要は、景気に左右されずに安定的な事業になりつつある」と、むしろソフト開発者不足で供給が追いつかない状況という。

 そのため、ソフトサービスは「次の10年」を見据え、手数を必要とする組み込みソフト開発を着実に伸ばすと同時に、技術力を生かし、収益率の高い自社パッケージ開発を積極化。6月に本格的な売り込みを開始したWebベースのリハビリテーション支援システム「リハスタ」は、簡単な操作で療法士の付帯業務を削減するとして、「最低でも年間20本程度は販売できる感触をつかんだ」(重村和博・ソリューション技術部マネージャー)という。

 全国的には、鹿児島県の鹿児島ネットワーク技研が提供し、高いシェアを獲得して先行するリハビリ管理システム「リハメイト」と、二分する勢いという。直販主体だったソフトサービスは、「リハスタ」でNEC系列の販社と手を組み、全国進出を確実なものにした。これ以外にも、組み込みソフト開発で培った技術を基に半導体組立装置開発支援パッケージ「SMART─GEM」で知られる。「この分野では、半ば独占状態」(島佳司・マネージャー)と、既存分野でも事業領域を拡大しようとしている。