視点

新世代ITベンダー育成のすすめ

2009/07/27 16:41

週刊BCN 2009年07月27日vol.1294掲載

 かの有名なドラッカーの師と呼ばれる経済学者のJ・A・シュンペーターは、かつて「駅馬車の延長線に鉄道はない」と、イノベーション(改革)に関して、従来からの連続性が途切れ、新しい流れの上にイノベーションがあると言った。

 従来のアナログ電話回線の上で組まれたネットワークや情報システムと、現在のようにインターネットを基盤とするデジタルデータ中心の仕事のやり方とでは、大きな違いがある。こうした新・旧の情報システムにおいては、イノベーションの発想がまったく変わってくる。ITコンサルタントやIT技術者は、従来の紙の伝票やアナログ回線を中心に改善・改良や工夫をする「駅馬車」の延長線でのシステム構築を提案するのでは用をなさない。次世代のインターネット基盤で世の中全体が繋がってくるインフラの上でどのようなビジネスモデルを想定して提案するか、すなわち「鉄道」の提案ができる技術者を育成する必要がある。


 個人や企業あるいは自治体のシステムがネットを通じて繋がってくることで、従来とは何が違ってくるのか。例えば、アナログ電話回線を利用してEDIを行う際には、情報セキュリティやコンプライアンスなどは特に考える必要がなかった。ところが、ホームページを活用してWeb-EDIを開始した瞬間に、どのようなデバイスでお客様はアクセスしてくるのか、アクセス数は1日何件なのか、受注データをどのように受け、配送締め切りや本日発送分のデータをどこに送るかなど、従来のシステムでは考える必要のない全体像あるいはビジネスモデルを考えて提案していかなければならない。同時に、どのような関連法律があるのか情報セキュリティはどうするかなどの知識とスキルも求められてくる。


 このたびIT戦略本部で発表になったばかりの新しいi-Japan戦略(iはイノベーションとインクルージョンの略)にも表記されているが、「IT経営の推進のため、経営の成功事例の可視化、情報システム・ソフトウェアの信頼性向上、ユーザー企業と情報システムベンダー等との連携による業務革新、情報システム産業における従来の受注型ビジネス形態から企画提案型ビジネス形態への脱皮等を促進する」。新しい鉄道の知識とスキルのある人材育成が、IT産業では急務となってきたのだ。


 「ITは道具」といっていた時代は終わり、「ITは電気や水道と同様の基盤となった」という発想が重要になってきた。

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