IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>109.「IT経営力大賞」シリーズ 共栄電業(下) 全社連携のITシステム構築へ

2009/10/06 20:45

週刊BCN 2009年10月05日vol.1303掲載

全社連携のITシステム構築へ

 「ITC-Labo.」の代表理事でITコーディネータ(ITC)の川端一輝氏から経営革新に関するアドバイスを受けて成長路線を築き、昨年度(2008年10月期)には大幅な増収増益を果たした共栄電業。同社は現在、大規模なITシステムのリプレースを検討している。笠島浩一社長は、「社内のデータが連携するシステムを構築する」方針を掲げており、実現のために川端ITCのアドバイスを受けている段階だ。

 川端ITCが共栄電業に対してコーディネートを進めたのは、経営革新以外にも情報セキュリティなどをはじめとして多種多様にわたる。経営という上流から現場までを把握している川端ITCは、「業務プロセスがさらに改善できるようなIT化を図っていきたい」との考えを示している。現在のシステムは、グループウェアによる情報共有から積算・見積り、受注伝票の発行などができるものの、各ITベンダーのパッケージソフトなどを購入しているため、入力し直さなければならないといった手間がかかる部分もある。こうした課題を、データベース(DB)の構築などで解決。顧客分析もできるようなシステムに仕上げたい考えだ。ただ、「今年は大不況の影響で、業績が思ったように伸びないという厳しい状況だった」と、笠島社長はITシステムに大きな投資をかけられなかったことを打ち明ける。「しかし、長期的な計画などと悠長なことは言っていられない。1年後には実現したい」(笠島社長)と意欲を燃やしている。初期投資を抑える観点から、SaaSやASPなど課金式のサービス導入も模索している。

 交通信号機など電気通信設備の設計や施工などを手がける共栄電業は、建設業者のなかでは比較的早い段階からIT化に取り組んできた。そのため現在でもITをうまく活用して事業拡大を図っているケースがある。その一つがグループウェアで自社に必要な入札案件の情報をまとめるというもの。「有益な情報はビジネスにつながる。情報をもとに、協業できる業者に話をもちかけて案件を獲得するという効果が出ている」(笠島社長)という。本拠地である大阪府だけでなく近隣地域にまで事業領域を広げており、複数のアライアンスを組んでいるようだ。もちろん、顧客に対しては「入札案件の情報をもとに、自社の強みを生かした提案を行っている」としている。

 パソコンの活用に関しては、社内で全社員がパソコンを使って仕事をこなす環境を整えているほか、外出先の社員がノートパソコンとウェブカメラで社に現場の映像を送るなどといったことも日常的に行っている。IT化で、すでに業務効率化を実現した共栄電業が全社データの連携を果たした際、どのような成長を遂げていくかに注目が集まりそうだ。一歩先を見据えた事業を手がけることは間違いない。

共栄電業では早くからIT化を図っており、社員一人にパソコン1台の体制をとっている
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