「地域活性化に地場ITベンダーの果たす役割」とは何か。創刊1300号を数えた「週刊BCN」では、このテーマを掲げて全国巡回取材を敢行し、47都道府県の有力ベンダーの代表者からナマの声を拾った。最終回となる第4弾をお届けする。
地域経済格差が広がるなかで、地場の中堅・中小企業を活性化させる“源流”となるのはITであることを確信している。地場ITベンダーが地域活性化で果たすべき役割はますます大きくなっている。はたして各社は、この重要な役割にどう応えているのか──。
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斎藤寛執行役員 東京営業本部長 |
当社は、愛知県内では最大手の富士通系ビジネスパートナーである。公共から医療、民需、組み込みソフト、CAD設計に至るまで、ほぼすべての領域をカバーしている。公共は愛知、岐阜、三重をベースに基幹業務システムを構築。医療は電子カルテなどの主要業務システムを押さえる。自動車を中心とする製造業が非常に強い地域ということもあり、生産や販売、原価計算、物流の各システムをトータルでインテグレーションしている。
しかし、昨年9月のリーマン・ショック以降、輸出型製造業の不振から愛知県の民需は急速に減退し、東海三県をベースとする当社には不利な状況となった。2008年3月期は連結売上高171億円、営業利益は8.2億円と、売り上げ、利益ともに過去最高を記録したが、09年3月期は売り上げはほぼ横ばい、経常利益ベースで3億円に半減した。当面、東海地区だけでビジネスを伸ばすのは厳しいことから、市場規模の大きい首都圏での受注活動を拡大したい。
首都圏では、06年頃から人員を本格的に拡充し、人材採用などを含めて営業・開発体制を整備してきた。
今回の世界同時不況を予測していたわけではないが、結果として地域的なリスク分散が可能な状態にある。
代表者…坂井幸治 社長 売上高…171億円(連結) 利益率…3億円(経常利益) 主要顧客…製造、流通サービス、 公共、医療 ハードとソフトの比率…2:8 県内・県外比率…9(中部圏):1 |
具体的には、開発パワーを生かしたエンドユーザーからの直接案件受注や、富士通と連携したビジネス展開だ。とくに医療分野は底堅い需要があり、富士通陣営が強い領域。当社も電子カルテやオーダリング、レセプトなど、中部圏で多数の構築実績をもつ。また、クラウド/SaaSの分野も有望だ。ユーザー企業の既存システムとクラウド型サービスを連携させるクラウドSIの引き合いが増えている。基幹業務システムに強い強い当社のノウハウを生かせる分野だ。
直近の売上高構成比は、名古屋を中心とする中部圏などが約9割、首都圏などが約1割。首都圏での業容拡大によって、将来的には中部圏などで6割、首都圏を4割の構成比に高めていきたい。