IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>110.「IT経営力大賞」シリーズ 八州電工(上) IT化で経営の理想形へ

2009/10/13 20:45

週刊BCN 2009年10月12日vol.1304掲載

 プルボックスなど電気工事材料の製造・販売を手がける八州電工(山本公義社長)は、IT化によって業務効率化や商品力の強化などを実現している。ITシステムをツールと考え、攻めの戦略やコスト削減などに生かしているのだ。理想的な経営の実現に向け、ITシステムをさらに導入するというのが同社の方針である。

 構築したシステムは、受注処理から生産手配、製造・出荷の業務プロセスを簡素化できるというものだ。「誤受注」や「誤製作」「誤出荷」を解消したほか、超短納期で特注品を作り、利益率を向上させている。システムを稼働させるために取り組んだのは、業務プロセスの標準化や改革意識に基づく組織活性化など。経営革新にはITコーディネータ(ITC)が深く関与した。

 ITCとの出会いは、今から5年ほど前に遡る。オフィスコンピュータからパソコンへと再構築したシステムが稼動しており、リプレースを検討。システム開発会社のステッドに相談を持ちかける。ステッドは、最適なシステムを導入するためには、ベンダー側とユーザー側の橋渡しを実現するITCを重要視していた。ステッドは八州電工にITCを紹介。その時のITCが田内幸夫氏で、後に森紘一郎氏も携わるようになる。八州電工のIT化は、2人のITCによって進められることになった。

 IT化を進めるにあたって、山本社長の強力なリーダシップのもとに八州電工では社内でプロジェクトチームを結成した。そのリーダーは高野淳・取締役統括部長・営業部長。当時のことについて、高野取締役は、「社長が病気で倒れるといった事態もあったが、田内さんと森さんに、さまざまなことをアドバイスしてもらって円滑に進めることができた」と、ITCに依頼したメリットを語る。ITCが、「ITシステムを再構築するのであれば、まずは経営戦略を立てることが重要」(森氏)と考えていたからだ。

 経営戦略の策定に向け、そのプロジェクトでは何十時間にもわたって議論が重ねられた。「合宿して話し合ったこともある」と、高野取締役は振り返る。SWOT分析では、現場の意見も取り入れることの必要性から全社員に施策を挙げてもらい、118件の提案が出てきた。次に、戦略マップを策定し、IT化の基本構想立案や機種選定、インフラ構築などといった手順でプロジェクトを進めた。

 こうしたステップを踏んだのは、「IT化で、すべての課題を解決できるわけではない。業務スタイルは現状のままでいいのかといった“業務の棚卸し”が必要」(森氏)という考えに基づいてIT化を進めたからだ。04年に同社とITCが出会い、05年からIT化プロジェクト発足、06年2月にテスト的なシステム導入、そして06年6月に全面的なシステム導入という流れを経て、同社はIT化に取り組んだ。加えて、業務プロセスの標準化も図れているのである。(つづく)

高野淳取締役は、「ITコーディネータからアドバイスを相当もらって成功につながった」と強調する
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