視点

新政権にIT基盤社会の早期実現を望む

2009/10/29 16:41

週刊BCN 2009年10月26日vol.1306掲載

 わが国でも民主党への政権交代が実現した。「滑り出しは順調」というか、後半の失速が心配なくらいのハッスル振りで頑張っているように見える。政権公約(マニフェスト)の中では、大型公共工事の見直しや高速道路の無料化、子供手当の新設等が話題になっているが、IT関係でも大胆な政策が盛り込まれている。

 それは、「税と社会保障制度共通の番号制度」すなわち国民総背番号制(用語は「マイナンバー制」等ソフト化がベター)の導入である。歳入庁の創設(国税庁と社会保険庁の統合)と併せ、所得の確実な把握と一体的な徴収が実現することになる。IT基盤社会においては、金融機関が顧客口座を管理するにも、流通業で商品を管理するにも識別番号(コード)を付すのは当たり前のことだ。税金や年金保険料を正確に捕捉・徴収できれば、「トーゴーサンピン」と呼ばれるような不公平感が消えるとともに、無駄遣い削減や埋蔵金発掘以上の収入が確保でき、財政の健全化や消費税率の引上げ緩和に繋がるのではないか。

 もちろん、本制度については、過去に何度も議論されながら根強い反対意見で実現しなかったことはよく承知している。プライバシーやセキュリティへの不安も分からないではない。しかし、ITが進化すると同時にセキュリティ対策も進歩している。本人への情報開示や第三者機関によるチェックなど一定の枠組みを整備すれば、元祖「1984」のような監視国家の出現は杞憂に過ぎるであろう。行政の効率化や国民の利便性向上など、社会全体として「リスクを上回るリターン」があることは自明で、それを享受しないのは実にもったいない。私などは、清く正しく美しい?人生を送っているので、「体内にICチップを埋め込んで完全管理してもらっても構わない」と冗談を飛ばしているくらいである。

 さらには、国民が政治に参加する機会である選挙においても、ITを本格的に活用する時期が到来したのではないか。民主党マニフェストにある「インターネットによる選挙活動の解禁」程度にとどまらず、ネット献金を拡大するとともに、

(1)インターネットによる投票を実現する
(2)電子投票所の並存や各種サポートを前提に、それでも投票しない人は棄権と見なす
(3)棄権した人からは多く徴税する

 といった強力な政策を推進することを通じ、ITを基盤とする公正で効率的な政治・社会の実現、および民主主義のアップグレードを図ってほしい。
  • 1