全米書籍チェーン最大手のバーンズ&ノーブル(Barnes & Noble、以下B&N)は、アマゾンが書籍をインターネットで販売することにそれほど脅威を感じていなかった。自分たちも同じようにインターネットで販売すれば負けないという自負があった。しかし、あれから10年、B&Nのウェブ販売は失敗し、アマゾンに書籍売り上げで首位の座を奪われた。アマゾンは2007年、電子ブックリーダー(eReader)のキンドル(Kindle)を売り出し、さらに電子ブック(eBook)の販売も開始した。B&Nは、これを既存書籍販売そのものが消滅する重大な脅威と感じ、新型機ヌック(nook)を開発、年末商戦に投入することに踏み切った。

アマゾンとソニーの戦い

 電子ブックリーダーは、ソニーと松下電器産業(現パナソニック)が日本市場で2004年に発売。残念ながら、携帯電話に押されて市場が立ち上がらず、昨年、両社とも事実上撤退した。ただ、ソニーはアマゾンに先行して06年から米国市場にも投入していた。先駆的なデバイスではあったが、人気が出なかった。しかし翌07年、キンドルが登場してようやく立ち上がった。

 以降、電子ブックリーダー市場の拡大は加速し、米国では今年中に300万台が売れる見通しだ。しかもその3割は年末に売れる。アマゾンからは、従来機の後継版で6インチ画面のキンドル2(今年2月発表)と9.7インチ大型画面のキンドルDX(同5月)、一方のソニーは今年5月、グーグルが集めたパブリックドメインの電子ブック(50万冊)を提供する提携を実現、8月には7インチ画面のデイリーエディションを登場させた。

勢ぞろいした「電子ブックリーダー」

Android機の登場

 この市場に挑戦するB&Nのヌックは、グーグルのアンドロイド(Android)をベースとしている。しかも2画面を備える。そのうちの一つは白黒の6インチ電子ブックリーダーとして機能し、下部のタッチカラー画面でメニュー選択ができる。ヌックのデビューは盛り上がり、発表後、予約注文が殺到した。当初発売日(11月30日)を品不足のため12月11日に延期したほどだ。

 ヌックの発表前日(10月19日)、シリコンバレーのベンチャー企業スプリングデザインから、もう一つのアンドロイド搭載機が投入された。アレックス(Alex)だ。こちらは6インチの電子ブックリーダーとフルブラウザ機能の3.5インチカラー画面をもつ。アレックスの二つの画面はアンドロイドによって統合され、6インチのモノクロ画面で電子ブックなどを読みながら、その中のハイパーリンクなどから関連情報をカラー画面に表示する。ヌックとアレックスは姉妹機のようにそっくりだ。事実、2社はこれまで提携していた。ところが、一転して11月初めにスプリングデザインがB&Nを訴えるに及んで、状況は混沌としてきた。

 これまでの電子ブックリーダーは書籍のダウンロードがネックだった。これも今や3GとWiーFiが一般化して解決した。次なる競争は、大型スクリーンや2画面、タッチパネルなどによる使い勝手だ。価格では6インチ画面のキンドル2とヌックが259ドル、ソニーの7インチが399ドル、9インチのキンドルDXが489ドルだ。

 先行するアマゾンをソニーが追い、新規参入のヌックは2画面搭載と、自分の電子ブックをiPodなどをもつ友人に貸し出す仕組みなどで挑戦する。どこが勝ち抜くのか、熱い年末商戦の幕が切って落とされた。

【著者紹介】
八木 博
 1995年から米国在住。2001年、三菱化学を早期退職し、シリコンバレーでIMAnet Inc.設立、CEO(imanetinc.com)。現在はクリーンテック関連の技術、市場、特許調査とスタートアップと大手企業の連携マッチングを実施。04年、シリコンバレーの大学連携団体JUNBA創設(junba.org)。09年6月までシリコンバレーの異業種交流団体SVMF(svmf.org)の会長を歴任。現在両団体のアドバイザーを務める。