泥棒を捕まえてから縄を綯(な)う、いわゆる「泥縄」、事が起きてから慌てて準備することを意味する。何か物事を起こす場合には、日ごろから準備をしておくべきという戒めである。

 中小企業へITを販売するのに、同様の失敗を繰り返している例が目立つ。大企業へのIT需要が成熟しているため、攻略市場を中堅・中小企業に向けることは理解できる。しかし、とくに中小企業は、ホワイトスペース、ブルーオーシャンである、という画一的な発想で多くのベンダーが市場に参入してきている。ここに欠けている大事なポイントがある。

 それは、中小企業を攻める場合の「三つの原則」である。まず誰が売るのか。次に何を売るのか。そして、継続できるかどうかの三つの原則だ。

 誰が売るのか(売ってもらうのか)。企業相手のビジネスなので、基本的には対面の販売(人)が必要になる。

 何を売るのか。安い、早い、簡単を目玉にした製品、サービスを特徴として市場参入しているケースが多い。これは中小企業固有の要素ではなく、大企業でも同様だ。経営に役立つという観点からいえば、企業規模に関係なく役立つ製品、サービスが求められる。

 三つ目のポイントが、継続できるかどうか、である。中小企業は大企業に比べて情報システム部門の専門担当人員が少ないために、ITの販売先に依存する割合が高い。したがって、継続的に面倒をみてくれる販売店やベンダーの存在は欠かせない。この継続性を担保するのは、販売店・ベンダー+製品・サービスの一体感だ。それと、儲かることも重要だ。

 では、この三つの要素をきちんと理解したうえで、中小企業攻略を打ち出してきているベンダーや販売店、サービスは存在するだろうか。クラウド、SaaSは中期的には確立する技術要素であることは間違いないが、現状は「ハコモノ」型であり、売る側の一方的な押し付けに過ぎない。中小企業が容易に受け入れるレベルにはない。中小企業は単に安い製品やサービスを欲しがっているのではなく、自社に役立つことを求めている。安い、早いなどの利点は付加的に考慮されるだけだ。

 基本原則のこの三点を「泥縄」式に取り揃えることは難しい。地道な取り組みを継続することこそが中小企業攻略の王道という事実を理解すべきである。果たしてどのベンダー、販売店がこの条件をクリアしているだろうか。