視点

スマートグリッドが開く広大なIT市場

2010/12/16 16:41

週刊BCN 2010年12月13日vol.1362掲載

 「スマートグリッド」はもともと、米カリフォルニア州の電力危機や2003年に起きたニューヨークの大停電をきっかけとして、送配電網を整備するとともに、通信機能を搭載した計測機器等を設置して自動的に需給調整が可能な電力系統を構築することを指していた。

 その後、08年に米国で金融バブル崩壊後の産業・雇用の立て直しと、温室効果ガスの急増による地球温暖化問題や化石資源枯渇を見越したエネルギー問題解決のため、オバマ大統領が「グリーン・ニューディール政策」を発表し、その中核として「スマートグリッド」が位置づけられ、一気に認知が高まった。それは、80年代から始まった「情報革命」の次に起こる「環境・エネルギー革命」の始まりといわれている。

 情報革命は、コンピュータと情報通信の急速な技術革新と新しいサービスの創出により、今ではすべての産業分野で投資・活用され、私たちのライフスタイルも劇的に変化をし続けている。では、環境・エネルギー革命は、どのような技術革新・サービスとともに未来を創造していくのだろうか。

 私が注目している技術革新・サービス分野は二つあって、その一つはやはりIT分野である。スマートグリッドの発展は、ネットワークコンピュータの歴史に類似しているといわれている。メインフレームによる集中処理から、クライアント/サーバーシステムに代表される分散コンピューティングの分散処理に移行したように、電力も大規模発電所による集中発電から、住宅用太陽電池等による分散発電が増加していく。そうなれば、今まで一方通行でよかった送電網は双方向での送電が必要となり、安定性を維持するための制御や、一時的に蓄電する2次電池なども必要となる。このようなエネルギーインフラを監視・制御するためには、新たなネットワーク情報インフラと関連機器が不可欠となるため、IT分野での新しい技術とサービスに注目しているというわけである。

 スマートグリッドは世界で500兆円市場を創出する革命といわれており、国内外の大手IT企業は、すでにさまざまなポジションで戦略を策定して投資を行い始めている。そして、情報革命でもそうであったように、環境・エネルギー革命においても、新たな技術や発想により、ITベンチャー企業にとって新しいビジネスチャンスが到来しようとしているのだ。
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