視点

消費者物価指数と年金

2011/02/10 16:41

週刊BCN 2011年02月07日vol.1369掲載

 総務省が発表した2010年平均の全国消費者物価指数は99.3と、前年比で1.0%下落した。マイナスは2年連続となり、デフレ基調の継続を裏づけた。下落率は最大だった前年(1.3%下落)からは0.3ポイント縮小したが、それでも過去2番目の大きさだ。この発表の前に、4月以降の年金額を引き下げる方針が伝えられた。公的年金制度は、物価の上昇や下落に伴って引き上げや引き下げが行われる仕組みとなっている。ただ、公的年金の額の引き下げは、年金生活者の反発を買うため、政府は過去に何度か特例措置で年金額を据え置いてきたが、今回は、さすがに特例は使わない形をとった。このように消費者物価は、年金制度に大きな影響を与える要素となっている。

 公的年金額の引き下げとあわせて、「年金の支給開始年齢を引き上げることの検討を開始」というショッキングなニュースも飛び込んできた。年金制度は現役世代の納めた保険料で、高齢者の年金を支える仕組みである。人口減少が続き、加入者数が減れば、その分、年金財政は悪化する。1年間の年金の支払額は、09年度に初めて50兆円を突破した。厚生労働省の推計によると、15年には59兆円と約2割増え、25年度には65兆円まで膨らむ見通しだ。65歳以上の高齢者一人に対する生産年齢人口(15~64歳)は、09年の2.8人から15年には2.3人に低下する見込みで、最悪の場合、現役一人で高齢者一人を支えるという形になることも予想される。早急に対策をとらなければ制度の維持も難しくなってきている。支給開始年齢は、1994年と2000年の2回の年金制度の改正で、それまで、サラリーマンに60歳から支給されていた厚生年金の支給開始年齢を、男子で昭和36年4月2日以後に生まれた人、女子で昭和41年4月2日以後に生まれた人には、65歳から支給するという改正を行った。アメリカなどの先進諸外国は、支給開始年齢を67歳とする国が多くなってきている。

 公的年金制度は、企業経営にも重大な影響を及ぼす。会社負担の社会保険料の増加は、労務コストのアップとなる。将来的には、年金の支給開始年齢の引き上げは避けて通れない状況にある。企業経営という観点からは、定年年齢の引き上げも含めて考えていかなければならない。「政治の道具にされてきた年金制度をどうするのか?」。私たちは真剣に考えなければならない岐路に立たされている。
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