米IBM(サミュエル・パルミサーノ会長)は、x86サーバー「System x」のWindows対応に関して、米マイクロソフトと緊密な関係を築いている。米カークランドにあるラボ施設では、競合他社に比べて新製品の出荷前検証を迅速に行ったり、各国の製品要求に応えた仕様を組み立てている。同施設の研究担当責任者と米マイクロソフトのIBM担当者に取材した。
米マイクロソフトの本社は米国西部のシアトル市郊外にある。その本社から北へ向かって、車で10分ほどの地域にあるカークランドには、IBMのx86サーバー「System x」にWindows環境を適合させる検証・研究を行う米IBMのラボ施設「マイクロソフト・テクノロジー・センター」がある。Windowsの最新テクノロジー製品が出荷される前に、同センターで「System x」上で動作検証などを施したサーバーが世界に向けてリリースされる。日本IBMをはじめとする世界拠点で引き受けたリセラーなどの要求を汲み上げて、各国の仕様に適合するように仕立てている。
IBMに限らず、世界的なサーバーメーカーは、各社とも同様のラボ施設をもっている。だが、IBMの場合は、競合他社よりも迅速にWindows搭載製品としてふさわしいかどうかを試験する組織「WHQL(Windows Hardware Quality Labs)」の認定ロゴを取得し、マイクロソフトと事前に製品仕様のやり取りを行うなど、両社で綿密な研究を積み重ねている。
マイクロソフト・テクノロジー・センターのリチャード・ブラウン・マイクロソフト・アライアンス・マネージャーは、「両社は、重役レベルで毎日30分程度の電話会議と、年2回ほど対面で会議を行っている」と、親密ぶりを示す。
両社の場合、製品レベルでいえばデータベースなどでは競合している。しかし、「OSレベルでは、x86サーバー市場の大半がWindowsベースであり、この環境を相互で技術革新をしていくことが、顧客に付加価値を生む上で重要だ」(ブラウン・マネージャー)と話す。例えば、「Microsoft Windows Server 2008 R2」で追加された仮想デスクトップ環境で動画再生できる機能「RemoteFX」の適合ではマイクロソフトがR2出荷時に競合他社を差し置いてすべてのテクノロジー検証を終え、同製品搭載の「System x」を同時発売することができた。
ブラウン・マネージャーと日頃から緊密に連絡を取り合う米マイクロソフト本社(レッドモンド地区)に在籍するフェルナンド・アルバラード・アカウントマネージャーは、「米IBMは当社製品のリリースに合わせて迅速に対応し、市場にインパクトをもたらしてくれる」と話す。こうした両社の協業があり、製品要求の厳しい日本企業のニーズにも素早く応えることができているのだ。(谷畑良胤)

左から米マイクロソフトのアルバラード氏と米IBMのブラウン氏(米レッドモンドにある米マイクロソフト本社前で)