視点

太陽電池に日本の技術力を最大限に生かせ

2011/12/08 16:41

週刊BCN 2011年12月05日vol.1410掲載

 11月に発表された2011年度上半期の太陽電池の国内出荷量は、前年同期比で29.6%増となった。住宅用に至っては前年同期比38.3%増となり、福島第一原子力発電所の事故の後、補助電源や節電対策として夏以降に急増した。2020年の国内市場予測は、現在の2.6倍となる2兆円に拡大するとも予想されている。

 ただ、上半期における太陽電池の国内メーカーシェアは82.5%と高いものの、昨年度に比べて3ポイントも落としている。これは昨年以降、中国メーカーを中心に海外メーカーの参入が増加し、欧米基準の価格と円高により、2~3割安い価格で提供され始めているからである。

 来年7月に施行される「再生可能エネルギー特殊措置法案」により、産業用の需要が急増すれば価格下落が加速し、価格競争力をもつ海外メーカーのシェアがより一層高まるだろう。世界における太陽電池シェアは、トップ5に中国メーカーが4社も入っており、シャープ・京セラの2社を足しても、世界第一位のSuntechに及ばない状況となっている。

 太陽電池の活用は、国内以上に世界市場でより一層拡大することが見込まれており、2020年時点では現在の5倍以上に達すると予測されている。このような国内外の動向において、海外メーカー、とくに中国メーカーが市場をけん引しているが、それでも国の政策や企業戦略によって成長の可能性をもっている分野だと私は考える。

 もともと、太陽電池セルにおける技術は日本が最先端で進んできており、太陽電池の発電効率はまだまだ向上する余地をもっている。そして、日本の技術は世界トップの水準を維持している。低価格で発電効率を年々高めている化合物系太陽電池の国内生産を拡大したり、印刷技術を利用して製造できる有機薄膜太陽電池についても近々商品化される予定である。

 また、最新の知財を製造技術に組み込んで、太陽電池セルの製造機器を輸出する事業展開も今後の成長分野だ。

 太陽電池関連に力を注ぐことは、国内市場を守るだけの戦略ではなく、世界市場の拡大を睨んで、産官学が一体となったグローバル戦略を策定し、予算化を行い、新幹線や原子力などで実行しているように、国策として海外にセールスする分野の一つであると考えている。
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