安倍政権が成長戦略の一環として「女性の活用」を掲げていることもあって、ビジネスの意思決定に関わる女性管理職の活動が注目される。宮崎千佳子さんは、海外製ソフトウェア製品のローカライズと国内販売を手がけるベンチャー企業のオーシャンブリッジで、営業部マネージャーを務めている。売上目標を高く設定し、現場での提案活動を重視することを方針として、事業の拡大を図る。部下たちをどう動かすか──。その実際を宮崎さんに語ってもらった。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/横関一浩)
[語る人]
オーシャンブリッジ 宮崎千佳子さん
●profile..........宮崎 千佳子(みやざき ちかこ)
神奈川県出身。大学卒業後、神奈川リコー(現リコージャパン)に入社。その後、ITベンチャーを経て、2001年6月、オーシャンブリッジの設立に参画。現在は、ソフトウェア「Brava」の国内販売で、営業全般を担当するほか、ディストリビュータチームのマネージャーとして部下の育成・指導を行っている。
●所属..........営業部
マネージャー
●担当する商材.......... ファイル閲覧・共有ツール「Brava」
●訪問するお客様.......... 全国のリセラー
●掲げるミッション.......... 顧客訪問に力を注いで、高く設定した今期の目標をクリアする
●やり甲斐.......... 部下の成長を支えること
●部下を率いるコツ.......... 案件管理を徹底して問題解決を一緒に考える
●リードする部下.......... 3人
現場で輝くのを「見せ」て自分を真似させる
私は、オーシャンブリッジの設立当初からこの会社で働いている。当時は、私を入れてメンバー3人ですべての仕事をこなし、マネージャーも何もなかった。前職でパソコンインストラクターを務め、お客様と話すのが好きな私は、営業の現場を担当してきた。各地のリセラーに当社製品を知ってもらうために、全国を回って機能や売り方のポイントを説明するのが仕事だ。バリバリの営業担当だった。
こうした現場の経験が豊富なことを生かして、営業マネージャーを務めている現在は、自分が部下の手本になって、お客様を足しげく訪問して提案する活動に力を入れるように仕向けている。
私が率いるチームの部下は3人。全員が20代の若いメンバーで、女性二人、男性一人という構成だ。私は、一週間に最低でも10社を訪問することを目標に掲げている。もちろん、私もその数字を達成し、多いときは、週20社のお客様に足を運んでいる。今期の売上目標も、非常に高く設定している。私はやさしい上司を心がけているが、売上目標はチームとして動いてクリアしなければならないので、数字に関しては厳しい。毎週、案件管理をアップデートし、部下の行動を細かく把握することを徹底している。うまく進まない案件があったら、すぐに「ちょっといい?」と担当の部下に声をかけて、一緒に問題を分析し、解決策を考える。
マネージャーに就任したのは5年ほど前だ。営業担当として当社でのキャリアをスタートしたこともあって、今も「本当は自分で営業をやりたい」と思うこともある。しかし、現在は製品のリセラーが多くなっていて、一人ではとても対応し切れない。部下に任せなければ目標を達成することなどできないと、自らに言いきかせている。
先日、部下がお客様から大きな案件の引き合いをいただいて、対応について「どうしたらいいのか」と私に相談しにきた。そのとき、私はあえて具体的なアドバイスをしないことにして、「自分で考えて、好きなようにしなさい」と指示した。お客様への訪問にも同行せず、対応のすべてを部下に任せた。部下は、それに責任を感じて力を発揮し、完全に自分の力で100万円の受注にこぎ着けた。注文が無事に取れて、私は、仕事を部下に任せ切った自分自身が大きくなったし、仕事を任せられた部下も成長したと実感した。そして、これこそが営業マネージャーとしての理想の姿だと思った。
[紙面のつづき]メンバーの適材適所を重視、内勤担当が外勤をバックアップ
自分が見本になってどんどんお客様を訪問し、部下たちに営業現場での活動の大切さをわからせる――。現場主義を貫き、顧客訪問を徹底するようにしたのは、半年前にマネージャー向けの外部セミナーに参加したのがきっかけだった。講師との面談で、「お客様のところに足を運び、話を聞くのは営業の基本。部下が積極的に外に出ることを促すには、まずは上司が動いて見本を見せないといけない」とのアドバイスをもらい、「なるほど、これまでここが少し弱かったかな」と反省して、改善に生かした。私はこうして、外部セミナーに参加したり、技術部門のマネージャーたちに相談したりして、いろいろな人の意見を参考にしながらリーダーとしてのスキルを磨いている。
技術系のマネージャーと話をすると、視野が広がる。営業マネージャーとしては、とにかく迅速な対応が求められるので、目の前のことしか考えない傾向がある。それに対して、長いスパンで開発プロジェクトに携わる技術畑の人は、ロジカルで冷静にものごとを考えている。先日、技術部隊のマネージャーに部下の管理について相談したら、もっと冷静になればいろいろな問題が解決するとわかって勉強になった。
この半年で、チームメンバーの外出時間は増えた。おかげで案件は活性化したが、反面、お客様から問い合わせに対応するという社内業務が少し手薄になってきた。そこで、外勤メンバーがお客様への訪問にもっと集中することができるよう、この6月に一人を新しくチームに入れた。その人には、内勤担当として、問い合わせへの対応をはじめ、資料づくりや見積もりの作成といった事務作業を任せて、外勤メンバーをバックアップする体制を築いた。最初の数週間は、私につくかたちでOJTを行い、データ集計や資料の直しなど、「できること」から仕事をさせて、自信をつけてもらった。今は、新しい環境にすっかり慣れ、チームの戦力になっている。
最近は、「女性の活用」が話題を集めている。営業現場では、お客様がいろいろ話してくれるので、女性が有利だと感じている。私は、男女を問わず部下の見本になって、私のように「目の前の仕事をきちんとこなせば、数年後、リーダーになれる」と伝えている。こうした日頃の仕事でのロールモデルになることで、部下たちの成長を支えたい。

iPhoneに情報共有ツール「Zyncro」をインストールし、外出が多い部下とのコミュニケーションを円滑にしている。その大切な端末を、ピンク色のケースで保護する。