フィギュアやプラモデルを展開する壽屋(清水一行代表取締役)は、今年4月、ファイル共有などができるコミュニケーションツール「Zyncro(ジンクロ)」を導入した。このツールを使って本社と各店舗をつなぎ、互いの動きを見える化したり、情報を共有したりしている。導入の決断を後押ししたのは、「ぜひ『Zyncro』を活用して、業務の効率化を図りたい」と考えた総務部が実施した社内アンケートだった。社員の過半数が「使いたい」と回答し、具体的な数字が上層部の説得につながった。
ユーザー企業:壽屋
プラスチックキットなどの玩具類や、フィギュア、プラモデルの企画・開発と製造・販売を手がける。設立は1953年。従業員数は180人。東京都立川市に本社を構える。
サービス提供会社:オーシャンブリッジ
サービス名:社内SNS「Zyncro」
【課題】大容量の画像ファイルはメールで共有しにくい
「下準備が大変だったけれど、結論からいえば、社内アンケートを実施してよかったと思う」。壽屋総務部総務課の鈴木寛之氏は振り返る。
壽屋は今年3月に、オーシャンブリッジが国内販売を手がけるコミュニケーションツール「Zyncro」(開発元=Zyncro)のテスト導入を開始して、4月に正式導入、全社規模での活用を決めた。導入に至ったのは、「Zyncro」によって、業務の効率化を図りたいという総務部の強い意思があったからだ。
1953年設立の壽屋は、フィギュアやプラモデルの老舗メーカーだ。東京・立川にある本社のほか、東京・秋葉原や大阪・日本橋、福岡・天神など、全国の有名な繁華街に直営の販売店を展開している。同社はこれまで、メールやファイルサーバー、メッセンジャーなどを利用して、本社内や本社と店舗との間のコミュニケーションを図ってきた。
しかし、業務の性格上、フィギュアの設計図など、容量の大きい画像ファイルをやり取りするケースが多い。「メールボックスの容量がすぐに足りなくなってしまうことが何回もあった」(総務部総務課の清水聡係長)という。容量に限界があってファイル共有が停滞することは、社員が効率よく業務をこなすことを陰で支える総務部にとって、頭の痛いことだった。
オーシャンブリッジに「Zyncro」の提案を受けたのは、そんな悩みを抱えていた時期だった。清水係長と鈴木氏は提案に高い関心をもった。まず、無償のテスト利用を申請して、「Zyncro」の活用をどのように業務の効率化につなげるかの検討に取りかかった。

総務部総務課の清水聡係長(左)と鈴木寛之氏【決断と解決】社内メールが半減。会議を減らすことにも活用していく
「Zyncro」は、Facebookなどソーシャルメディアのようなインターフェースを備え、文書管理やファイル共有などの機能を盛り込むツールだ。社内だけのプライベートな環境でありながらも、ソーシャルメディアを使うような感覚で、気軽にコミュニケーションをとることができる。
総務部はテスト期間中に、社内メールを廃止して、「Zyncro」上で情報をやり取りするよう、社員に促した。「最初はすぐに『Zyncro』に馴染むことができない人もいたが、『Zyncro』を使えば、大容量のファイルでも簡単に共有できることがわかって、全員、熱心に使い始めた。この様子を見て、ぜひ正式に導入したいと考えていた」と清水係長。
ところが、「コストのハードルもあって、導入を決める上層部から、なかなかゴーサインが出ない」(清水係長)という壁にぶつかった。そんな状況にあって、オーシャンブリッジの営業担当者に相談したところ、「社内でアンケートを行ってみては」とのアドバイスを受けたという。そして、全従業員180人に、「『Zyncro』を使いたいか、使いたくないか」を質問して、「Zyncro」導入の支持率を上層部に具体的な数字で示すことに力を入れた。
総務部の努力が実を結び、「過半数は『Zyncro』を使いたいという結果が出た」(鈴木氏)。その数字をもとにつくった資料で上層部を説得し、正式導入につなげたのだ。
「Zyncro」を採用しておよそ4か月。現在は社内メールも併用しているが、「量は半分くらいに減った」(鈴木氏)と、導入効果が現れている。「当社は会議が多く、お客様と打ち合わせする会議室が取りにくい。『Zyncro』を使って、何とかしたい」(鈴木氏)。さらなる活用に積極的に取り組む姿勢を示している。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
社内メールの量が半分に減った
大容量ファイルの共有が簡単
会議を減らすことにも生かす