SAPのユーザー会「ジャパンSAPユーザーグループ」(JSUG)は、会員同士の情報交換や最新トレンドの研究などの活動が充実しているが、最近は特に海外のユーザー会と連携して、SAPの戦略に対して提案をする活動も行っている。そのために徹底しているのが、SAPに頼らない独立独歩の運営だ。

海外ユーザー会との連携を重視

 ベンダーからの中立をうたうユーザー会は多い。ユーザーが主体となって運営し、ベンダーの営業の場にはせず、情報交換と研鑽の場とすることを目指すからだ。SAPのユーザー会「ジャパンSAPユーザーグループ(JSUG)」もこの方針を貫いていて、さらに事務局長もユーザー側が担うという徹底ぶり。2013年10月に就任した三井一夫事務局長は、その背景を「ベンダーが事務局を担うのは日本的。海外では受け入れられない。海外のユーザー会は独立意識が強い」と説明する。ユーザー会のグローバルな会議で、通訳をSAPジャパンに依頼したところ「なぜSAPの社員が話すのか」と指摘されたことがあったという。このように運営は独立独歩だが、基本理念はあくまでもユーザー、SAP、パートナーの三位一体の関係を大切にすることに置いている。

 JSUGの活動目的は、「エデュケーション」「ネットワーク」「インフルエンス」。エデュケーションは、SAP製品に関するビジネスソリューション情報の入手と共有、検証、教育を指す。ネットワークは、会員相互の親睦と会員の研鑚。最後のインフルエンスは、SAPの戦略への影響を意味する。海外ユーザー会との連携にこだわる理由は、この「インフルエンス」にある。

 「JSUGの提案は、単なる一ユーザーの声ではなく、ユーザー会の声なので、SAPは重く受け止める。とはいえ、SAPはグローバル企業。日本のユーザー会が声を上げても、少数意見として扱われる可能性がある。SAPの戦略に対して影響力をもつには、海外のユーザー会と歩調を合わせなければならない」と三井事務局長は「インフルエンスの必要性を語る。

 基幹システムを導入する目的の一つは、企業価値の向上にある。より経営に貢献するシステムにするために、JSUGはSAPの基本戦略に関わってきている。SAPから独立した組織にしているのは、そのためだ。ユーザー会でよくある「ベンダーの宣伝色を嫌う」のとは、次元が違う。国内最高クラスの6万円という年会費も、独立独歩の方針ゆえのことといえそうだ。

次世代リーダーの育成にも力を入れる

 JSUGの設立は1996年で、会員は2013年末時点で478社(賛助会員を含む)。活動の組織は、目的別に、産業ごとの「インダストリーコミュニティ」、地域ごとの「リージョナルコミュニティ」、業務ごとの「ビジネスプロセスコミュニティ」、技術や機能ごとの「テクニカルコミュニティ」の大きく四つに分かれている。各コミュニティ内に部会やワーキンググループがあり、年間の重点テーマをベースに活動している。年2回、合同イベントを開催し、とくに秋は年間最大のイベントとして、「JSUG Conference」を開催するほか、地域ごとにフォーラムを開催する。

 さらに、5年前からは「リーダーズエクスチェンジ」という活動で、次世代リーダーの育成に力を入れてきた。「SAP製品が絡む業務は経営そのもの。次世代リーダーは、その意識をもつべきだ。いい意味で、システム屋にはなってほしくない」(三井事務局長)という考えからだ。目指すのは、情報分野の戦略的リーダーであるCIO(最高情報統括責任者)の育成。リーダーズエクスチェンジでは、マネージャークラスのメンバーが20人ほど参加し、勉強会を行っている。

世界のSAPユーザー会

 日本のJSUGは任意団体だが、米国のユーザー会は独立法人になっていて、ユーザー会の会長とは別にCEOが経営を担い、約50人のスタッフを擁するという。実は任意団体なのは、世界で日本と中国だけ。世界にあるSAPユーザー会は小規模なものを含めて20を超えるが、そのうち16か国のユーザー会をまとめるユーザー会の国際組織「SUGEN(SAP User Group Executive Network)」加盟組織は、ほとんどが独立法人として活動している。SUGENは、各国のユーザー会の代表が集い、意見を交換する場。活動はプロジェクトと呼ばれ、JSUGもプロジェクト活動に積極的に参加し、日本の声を届けている。

 SUGENの活動によって、各国のユーザー会は強い協力関係を結んでいる。2013年には、米国のSAPユーザー会「ASUG(Americas' SAP Users' Group)」のブリジット・チェンバース前CEOが秋期合同部会のスペシャルゲストとして来日し、特別講演を行った。

 チェンバース前CEOは、ユーザー会の活性化策として、「先端を走る企業をサポートせよ」とアドバイス。先端を走る企業がユーザー会に存在することによって、他のユーザーにとっては情報を収集する価値が出てくる。その結果、ユーザー会が活性化するという考えだ。米国でも、本当に先端を走っている企業は5%ほどで、そこについていこうとする企業が15%ほどになるという。一般論としていえば、どのユーザー企業も公平に扱う日本の多くのユーザー会に米国式がなじむかどうか、懸念されるところだが、活性化に向けた突破口がみつからないときには検討する価値はあるだろう。

ジャパンSAPユーザーグループ 事務局 三井一夫事務局長。2013年10月から事務局長を務めている。1972年に三井金属鉱業に入社し、神岡鉱業所(現、神岡鉱山株式会社)に配属される。翌年、製錬所トータル制御システムプロジェクトに参加して以来、情報システム部門一筋の道を歩んできた。SAPとは1997年に導入して以来の付き合いになる。企業にとってSAPの有益性は身を持って経験してきた。ユアソフトの社長時代には、JSUGの常任理事を務めた。


【概要(2013年12月現在)】
会員資格:
・法人会員:SAPのシステムを使用している、または使用予定の法人
・賛助会員:本会の目的に賛同した、SAP認定パートナー
年会費:
・法人会員:6万円/年(初年度無料)
・賛助会員:11万円/年
入会金:なし
会長:前川一郎(三井物産)
主な活動:部会/分科会/フォーラム/研究会の開催、大会(JSUG Conference)及び総会の開催、各種イベントの開催
会報誌:「JSUG INFO.」(年1回発行)
会員企業数:478社(法人会員:424社、賛助会員:54社)
発足:1996年
その他:国際組織のSUGEN(SAP User Group Executive Network)に加盟