新IT戦略では、二つめの大目標である「健康で安心して快適に生活できる、世界一安全で災害に強い社会」の実現に向けて、五つの施策を打ち出している。その筆頭に掲げられているのが、ITを活用した地域医療・介護サービスの提供と、健康長寿社会の実現に向けた医療・健康情報の利活用促進だ。医療情報連携ネットワークの普及拡大に向けた施策群と、医療・健康情報データを広く活用する基盤づくりの施策群を進める。
健保がレセプト情報などを分析・活用
医療情報連携ネットワーク関連の施策は、厚生労働省や総務省が連携して進めてきた、データ、システム仕様の標準化推進や、広域医療連携の実証事業が中心で、従来の施策を整理・体系化したという色彩が濃い。将来的には、システムのクラウド化やモバイル端末の活用によって、在宅医療・介護にも低コストでネットワークを拡大する考えだ。
一方、データ活用の基盤づくりのための施策群は、今年度スタートする新規の施策が多く、予算もさらに大規模になっている。予算規模が最も大きいのは厚労省で、医療報酬の明細書であるレセプト情報や健診情報を活用した健康増進支援施策に、2013年度補正予算案と2014年度予算案を合わせて60億円以上を計上している。
具体的には、健康保険組合の「データヘルス計画」作成支援が主な事業。「データヘルス計画」とは、健康保険組合などの保険者が、費用対効果と被保険者の健康増進を両立する事業運営を行うための計画をいう。レセプト情報や健診情報を分析することで、被保険者全体の健康・医療状況を把握するとともに、保健事業の効果が高い対象者を抽出し、費用対効果を考えたサービスを企画・実施する。さらに、これらをPDCAサイクルで回していく。
厚労省は、すべての健康保険組合に、2014年度中に計画の作成に着手するよう求めているので、ITベンダーにとっては提案のチャンスとなる。(本多和幸)