独立系ITコーディネータ(ITC)の使命は、ITの活用によって中小企業の経営を支援することにあると私は考えている。しかし、実際には支援先にITシステム導入を促すことに終始して、本当の意味で経営を支援できていない独立系ITCが少なくないと感じている。その理由は、ITCの多くがSE出身で、経営の知識や専門領域をもっていないことにある。
例えば、リピーターを増やすためにポイントシステムの導入を検討している小売店を考えてみよう。経営知識や専門領域をもたないITCの多くは、「この製品を使えば、お客様のRFM分析やABC分析ができて、リピーターの増加につなげられます」と、システムのスペックの説明に終始してしまう。しかし、経営面でいえば、実はポイントを付与することは、将来発生するコストの増加を招き、ポイントシステムの維持費を含めた固定費が増加する。つまり、損益分岐点が上昇するわけだ。ポイントを付与すれば、中小企業はこれまで以上に売り上げを増やさなければ利益を捻出できない。本来なら、このマイナス点についても言及し、必要とされる売上高を算出して支援先に説明する必要があるが、経営や小売業の専門知識をもたないITCだと、この事情をきちんと説明できない。これでは、たとえシステムを導入したところで、支援先から不満が出てくるのは時間の問題だ。
確かに、独立系ITCにとって、少ない案件のなかで収益を上げることは大切だ。しかし、いかにシステムを導入するかに終始していては、“ベンダーと中小企業のかけ橋になっている”と胸を張ることはできない。
先に挙げた例の逆もしかりで、税理士出身など、経営に詳しくても、ITには詳しくない独立系ITCも散見される。結局のところ、大事なのはバランスだ。まんべんなく最低限の知識を蓄えたうえで、小売業、飲食業、商店街の活性化など、専門領域をもつことが大事だ。自戒の意味も込めて、中小企業に頼りにしてもらえるように、経営目線での活動に精進していきたいと思う。(談)