私は独立系ITコーディネータ(ITC)として、中小企業のIT経営を支援しているが、ときには特定のIT企業のなかに入って、企業内ITCと一緒に仕事をすることがある。そんなケースでは、ITCの資格を十分に活用しきれていない企業内ITCが多いと感じることがしばしばある。お客様目線でものごとを捉えられていない企業内ITCが意外に多いのだ。
例として、金融業界を得意領域とするある企業内ITCを挙げよう。その方は、金融業向けのシステムに関してはすぐれた技術をもっていたが、金融業界の仕組みそのものについては、あまり勉強していなかった。その結果、ITCの資格を保有していながらも、顧客の目線に立った最適なシステムを提案できなかった。納期に合わせてシステムを開発できても、納入した後に顧客から「この機能は変更してほしい」といった指摘や要望が多く出てくるようでは、顧客の満足度を高めることができないし、システム改修にも時間をとられてしまう。
企業内ITCが資格を十分に活用できていない大きな理由は、資格を取得すること自体が目的化しているからだと思う。「上司に勧められたから」「資格取得が昇格の条件だから」などの動機だけでは、ITCになることがゴールになってしまい、取得後に自分の働き方を変えることができない。それでは、せっかくお金と時間をかけてITCの資格を取得する意味がない。残念ながら、「資格の更新料がもったいないので、ITCをやめる」という事態にもなりかねない。
だから私は、自身が講師を務めるITCの資格取得に向けた研修では、「何のために資格を取得するのか、今の仕事にどう生かしていくのか、仕事のやり方をどう変えたいのかをよく考えてください」と受講生に強く訴えかけている。ITCの資格を生かすも殺すも、結局は自分次第だ。今の自分の立場をよく考えて、“ITCになって、このように働き方を変えて、キャリアアップにつなげる”と、具体的なイメージをもって資格の取得に臨んでほしい。(談)(真鍋武)