安全で災害に強い社会を実現するためには、社会インフラの適切な維持管理・更新が欠かせない。1980年代、米国全土でそれまで維持管理に十分な投資がされなかった道路施設が一気に老朽化し、社会問題化した。社会インフラの大規模な修繕は、国や自治体の財政を大きく圧迫するため、米国では未だに欠陥のある橋梁などがそのままになっているケースも少なくない。「荒廃するアメリカ」と呼ばれるこの現象は、多くの国にとって反面教師となっているが、高度経済成長期に社会インフラを急ピッチで整備した日本にとっても、他人事ではない。大規模な修繕が必要になる前に、損傷の予防保全を行うことでライフサイクルコストの縮減を図っていく必要があり、ここでもITには大きな役割が期待されている。
ITで社会インフラの維持管理を最適化
国のIT戦略では、社会インフラの維持管理・更新に必要なデータを体系的に把握、蓄積するために、各施設の台帳整備と連動して、劣化状況などをデータベース化する方針を示している。また、異なるインフラ同士のデータを統一的に扱うことのできるプラットフォームの構築も進める。これにより、例えば道路と、地下埋設物である上下水道管やガス管などの維持管理・更新を、合理的な判断基準にもとづいて一体的に行うことも容易になる。
さらに、センサ、ロボット、非破壊検査などの技術開発や実証も行い、M2M技術を駆使して劣化・損傷箇所の早期発見や維持管理業務の効率化も図る方針だ。
具体的な施策としては、まず、国土交通省がデータベースとプラットフォームの構築を進めるほか、国交省、総務省、経済産業省などが、それぞれ社会インフラ維持管理のためのM2M技術開発プロジェクトを並行して行うかたちだ。2014年度からの新規事業では、経産省が、社会インフラと産業インフラの両方を対象にした維持管理・更新のためのM2M技術開発プロジェクトに、予算要求時点で41億円を計上しており、他省の類似プロジェクトと比べて規模の大きさが際立つ。また、総務省は、低コストで手軽に導入できるM2M技術の開発をスタートさせる。(本多和幸)