東日本大震災以降、災害対策にITを活用しようという動きが加速している。新IT戦略では、「災害情報の収集・配信・利活用の促進」「災害用ロボットの開発・導入」という二つのテーマを中心に、総務省、国土交通省、文部科学省、内閣官房が個別の施策を展開していく方針を打ち出した。
災害シミュレーションやロボット技術を開発
「災害情報の収集・配信・利活用の促進」分野ではまず、総務省とその外局である消防庁が2004年から開発・整備を進めてきた全国瞬時警報システム(J-ALERT)の情報伝達路を多重化・多様化する。地域の実情を踏まえながら、緊急速報メールや登録制メールなどを活用し、すべての住民が災害情報を素早く確実に受け取ることができる体制の構築を進める。
2014年度の新規施策としては、総務省が、地理空間情報を活用した次世代の災害シミュレーション技術の開発に取り組む。火災の延焼予測技術や、ソーシャルメディアに集積されるビッグデータをもとにした災害状況の可視化・マッピング技術、さらには住民の避難誘導のための技術などが具体的な開発テーマだ。
「災害用ロボットの開発・導入」では、国交省と総務省が新規事業を立ち上げる。国交省は、人目の届かない場所を的確に調査し、施設の健全性を保つ「メンテナンスロボット」や、危険な災害現場に投入して迅速・的確な状況把握を支援する「災害対応ロボット」などの技術開発・高度化と、社会インフラのメンテナンスの現場への導入を推進する。今年3月には、提案の公募を開始する予定だ。
一方、総務省が手がけるのは、石油コンビナートなど、エネルギー・産業の基盤施設で大規模な火災や爆発が発生した場合に役立つ消防ロボットの研究開発だ。災害情報を把握したうえで、気象情報も加味しつつ、最適な位置から最適な方法で自律的に消火を行うようなロボットシステムの確立をめざす。これによって、消防隊員が進入できないような危険な場所でも効率的な消防活動が可能になり、大規模火災・爆発火災の早期抑制や被害の最小化といった効果が期待できる。(本多和幸)