語る人
岸本哲哉 氏
総務省 情報流通行政局
情報通信利用促進課長
1992年文部省入省。初等中等教育局小学校課、徳島県教育委員会教職員課長、大臣官房総務課専門官(教育改革官室)、初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐、同学校評価室長、同参事官(学校運営支援担当)などを経て、2014年7月より現職。
クラウドの教育・学習 プラットフォームを実証
昨年度に終了した「フューチャースクール推進事業」は、教育環境ICT化の実現に向けて、大きな成果を挙げた。その後継的位置づけの事業として、今年度、5.5億円の予算を用意して取り組んでいるのが、「先導的教育システム実証事業」だ。
具体的には、マルチOSに対応するHTML5ベースのコンテンツ利用を前提に、クラウドの学習・教育プラットフォームを総務省が開発し、その標準化を進める。これを、学校内だけでなく、家庭や地域でシームレスに使える学習環境構築に役立てるとともに、多様なコンテンツや学校種の違いなどを越えて学習履歴を統合的に蓄積し分析・活用すべく、技術的可能性を実証する。
フューチャースクール推進事業では、やはりITの導入コストを下げなければ教育ICT化の本格的な普及は難しいという課題が浮き彫りになった。それを解決できる可能性があるのが、クラウドだ。実証地域は3地域12校を予定しており、9月5日に募集を締め切った。また、クラウドプラットフォーム構築の請負事業者も、11月には決めたい。3学期の開始とともに、学校現場で実証事業を開始する体制を整える。
来年度は2倍の予算を要求 事業の大幅な拡大を期す
また、新藤義孝・前総務大臣が、教育ICTの先進国であるフィンランドを視察した成果を政策に落とし込むために立ち上げた「ICTドリームスクール懇親会」が提言をまとめ、それを来年度予算の概算要求にも反映した。
提言の特徴は、学習・教育クラウドプラットフォームの活用を、学校、家庭、民間教育事業者の間や、都市部とへき地の間を最先端ICTの活用でシームレスに結ぶことで、地域の教育に学習者目線からの新たな価値を加えて、地域活性化やまちおこしにもつなげていこうという考え方を示した点だ。地方の衰退が叫ばれて久しいが、ICTをフル活用して魅力的な教育環境を実現している自治体には、人が集まってくる。内閣改造で地方創生担当大臣が新設されたが、まさに、方向性は同じだといえる。
来年度は、先導的教育システム実証事業を、こうした提言に従って拡大したいと考えており、今年度予算の倍にあたる11億円を要求している。(談)(本多和幸)
組織の概要
ICTの利活用促進施策全般を担当する。高齢者や障がい者のデジタルディバイドを解消するための「情報バリアフリー」施策などを進めてきた。近年は、教育環境ICT化に重点的に取り組んでいる。