語る人
豊嶋基暢 氏
文部科学省 生涯学習政策局
情報教育課課長
1991年、郵政省入省。電気通信局事業政策課、総務副大臣秘書官、慶應義塾大学メディアコミュニケーション研究所准教授、総務省総合通信基盤局電波部移動通信課推進官などを経て、2013年8月から文部科学省生涯学習政策局情報教育課課長
ICTを活用した授業を総合的に支援してほしい
教育環境のICT化は国の重要な施策だが、ITベンダーには、機材を納入してそれで終わりではなく、それぞれの学校でICTを活用した授業が確立されるまでトータルにサポートしてほしいというのが私の本音だ。現場の教員の声も同様だと認識している。彼らの希望に寄り添った取り組みを期待したい。
最終的には、地方公共団体ごとに、教育の現場、つまりは教員自身が、ICTを自分たちがどのように活用していくかを考えなければならないが、教員はICTのプロではない。こんなことをやってみたいという抽象的なイメージであっても、それを具体的なシステムに落とし込んでくれる存在が必要だ。企業向けにつくった製品を、そのまま学校にもち込むのは無理があることも多い。現場のニーズを踏まえて、教育向けに最適化した商品を提供してくれるベンダーは少ないのが現状といえる。
ITベンダーのアプローチがまったくない地域も
さらに、全国を見渡すと、ITベンダーのアプローチがまったくない地域も多い。分母となる自治体の数は約1800ある。その大多数、とくに大都市圏から離れた自治体は、相談相手がなかなかいなくて困っている。大手ベンダーがリーチしているのも一部の地域に過ぎない。早急に販路を広げてほしいというのも切なる願いだ。
まずは教育ICT市場を確立することが先決
いずれにしても、市場の形成期ではあるので、多くのITベンダーにトライしてもらいたい。国としても、産業の構築の仕方をトータルで考えるべき時期だと思っている。
学校側からみると選択肢が増えることが重要で、そのためには標準技術をつくったうえで、オープンな市場を形成していかなければならない。大手ベンダーだけでなく、さまざまな企業がそこに参画し、バラエティに富む機材・教材を揃えてもらいたい。教科書の標準化には着手したが、コンテンツの整備も含めてこれからが本番。企業同士がつぶし合うのではなく、まずは教育ICTを市場として確立することが大事だ。
また、子どもたちの情報を扱う産業なので、セキュリティに対する信頼度を並行して高めていかなければならない。「安全」を意識した商材開発も意識してほしい。(談)(本多和幸)