ウェアラブル端末で、着実に市場に根づきつつある領域がヘルスケア/スポーツ目的で使われる活動量計である。グーグルのAndroid OSや、アップルのiOS系列のOSを搭載したウェアラブル端末に対して、活動量計は歩数計の発展形という色彩が濃く、スマートフォンとの連携は専用アプリによって行われる方式が多い。
世界的なウェアラブル対応OSでリードするのが難しい日本ベンダーでも、「活動量計+専用アプリによるスマートフォン連携」の方式ならば独自性を出しやすい。この領域で意欲的な製品を市場に投入し続けているのがセイコーエプソンである。同社の中核となる技術は、独自に開発した「高精度脈拍センサ」(写真参照)だ。血中のヘモグロビンが光を吸収する性質を利用したもので、エプソンは腕時計型ウェアラブルの裏側に脈拍センサを取りつけ、手首の皮膚の上からLED光を照射。この光の反射具合によって血流の変化(脈拍)を計測する。
従来の歩数計に使われている加速度センサだけなら、「身体の動き」しか測れないが、脈拍センサと組み合わせれば「身体の負荷」の状態までわかるわけだ。例えば、平坦な道を1000歩歩くのと、上り坂を1000歩歩くのでは、運動強度も消費カロリーも違ってくる。加速度と脈拍を組み合わせることで、「より正確な活動量を計測できる」(セイコーエプソンの森山佳行・業務執行役員センシングシステム事業部事業部長)というのが、エプソンの売りである。
エプソンは、今年夏にイギリスとドイツ、フランスなど欧州地区で先行して脈拍センサ搭載の活動量計「PULSENSE(パルセンス)」を発表。日本では同製品シリーズを11月6日に販売を開始し、他のアジアや北米へも順次展開していく構えをみせる。
PULSENSEのもう一つの特徴は、睡眠時間や眠りの「深さ」「浅さ」を測定できることにある。活動量と脈拍などから「いつ睡眠に入り、その深さはどれくらいで、いつ起きたのか」を自動的にはじき出す。前述の運動強度やカロリー収支に加えて、「睡眠の時間や質」から“からだと心のバランス”を知ることで「健康維持に役立てることができる」(森山業務執行役員)というわけだ。
測定したデータは、スマートフォンの専用アプリに転送して、グラフを多用してわかりやすく表示することができる。ヘルスケア/スポーツ用途の活動量ウェアラブル端末は、大手からベンチャーまで世界中のベンダーがこぞって製品化に乗り出している激戦地。エプソンは、独自技術の脈拍センサで勝ち残りを目指す。(安藤章司)

腕時計型ウェアラブル端末の裏側に取りつけられた高精度脈拍センサ(光っている部分)
脈拍センサ搭載の活動量計「PULSENSE」