情報システム改革の推進体制も強化
「世界最先端IT国家創造宣言」の改定では、個別の政策を追加しただけでなく、政策推進の体制にも手を加えた。とくに、本連載の第7回で紹介した政府の情報システム改革については、新しく閣僚級の会議を設置し、行政のIT化と業務改革をセットで強力に推進する姿勢を明確にしている。
過去を振り返ると、2001年に「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)」が設立され、政府全体のIT政策の取りまとめ役を担う組織が誕生している。各府省庁に散在するIT関連施策に横串を通し、全体のマネジメントを試みてきた。現在の事務局は内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が務めている。
12年には、各府省庁のIT投資や情報システム整備・運用などの統括責任者として、政府情報化統括責任者(政府CIO)が設けられ、リコーの副社長やリコージャパンの会長を務めた遠藤紘一氏が就任。翌13年には「内閣法等の一部を改正する法律」、通称「政府CIO法」が成立して政府CIO(正式名称は内閣情報通信政策監に変更)に法的な裏づけができた。
政府CIOを支援するeガバメント閣僚会議
これまで、各府省庁がIT政策における連携を図るための場としての機能は、「各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議」が担ってきた。しかし、これは官房長、局長級の会議であり、いわば官僚同士の会議。内閣官房IT総合戦略室の濱谷健太・参事官補佐は「もう一つの上のレイヤ、つまりは閣僚級が集まる会議を設置して、統一的な意思決定ができる体制が必要だということになった」と説明する。これが世界最先端IT国家創造宣言の改定に反映され、「eガバメント閣僚会議」が発足した。同会議は、内閣官房長官を議長とし、関連7閣僚と政府CIOで構成される(詳細は表参照)。
昨年6月の初会合では、菅義偉・内閣官房長官が「電子政府の実現により政府行政の効率化を目指す。例えば、旅費精算や人事給与システムなどは各省バラバラだし、省庁によっては局ごとに違うところもある。内部管理業務・ルールについて徹底して見直しを行い、スリム化を図ったうえでIT化を進めるとともに、国民のニーズが高いものは電子申請を推進することも重要。政府共通プラットフォームに各府省のシステムを乗せることなどによってコスト削減も図りたい」と説明。同会議で政府CIOの活動を強力に支援していく方針を確認した。(本多和幸)