セキュリティ製品ベンダーのソフォスは、グローバル方針として「チャネルファースト」戦略を掲げ、昨年度は実に92社の新規販売パートナーを獲得した。今年度はさらに大幅な上積みをねらう。セキュリティ製品で、短期間にこれだけ多くのパートナーを獲得できた理由を聞いた。(日高彰)
英国に本社を構えるSophosは、パートナーとの協業を通じて、中堅・中小企業向け市場を攻略する方針をグローバル戦略として打ち出している。昨年3月に日本法人の代表取締役社長に就任した纐纈昌嗣氏は、「ラージエンタープライズ市場を狙うセキュリティベンダーが多いなか、異色の戦略かもしれない」と話しつつ、「SIerが、実質的にお客様の情報システム部門を担っているともいわれる日本は、チャネルファースト戦略がとくに重要な市場」と述べ、グローバル戦略と国内の営業方針の一致が新規パートナー開拓の原動力の一つになっていると説明する。
昨年度(2014年4月~15年3月)は、新規パートナー50社獲得という目標に対し92社を獲得。今年度の目標は300社と大幅に引き上げたが、約半年間でほぼ達成の域にあるという。鈴木敏通・チャネル営業部部長によれば、地道な営業活動の結果ということだが、「ディストリビュータ、リセラー各社からは非常によい反応が得られている」という。
ソフォスでは、ウイルス対策ソフトやUTM(統合脅威管理)アプライアンス、MDM(モバイル端末管理)などの製品ポートフォリオを有しているが、それらがクラウド経由で連携し、ユーザー企業の情報システムを全自動で保護する「セキュリティオートメーション」を推進している。セキュリティを強化が必要なのはわかるが、何を導入すればいいかわからない、運用する人員もいない、という中小企業の切実なニーズに答えられることから、市場からも好反応を得られているようだ。
セキュリティオートメーションの考え方は、パートナーにもメリットがある。纐纈社長は「パートナー契約にあたっては、ソフォス製品の担当者にトレーニングを受講いただく必要があるが、トレーニングを1日受ければ、驚くほど簡単に運用できることを実感していただける」と話す。過去にネットワーク機器の納入経験がほとんどないOA機器販社なども、パートナーに加わり同社製品を販売している実績があるという。とくに、セキュリティオートメーションの考え方を打ち出すようになってから、UTM製品の販売が大きく伸びており、UTMで同社製品の使い勝手を知り、追加でソフォスのウイルス対策ソフトを導入するという顧客も現れているという。ネットワーク側、端末側の両方をソフォス製品で揃えることで管理も楽になるので、販売パートナーとしては、どちらかを導入してもらえれば追加提案が容易というメリットがあるようだ。
販売網拡大で当初目標以上の実績を挙げたソフォスが、次のステップとして力を入れているのが、パートナーの製品知識や技術の習得を支援する認定資格制度だ。(つづく)

纐纈昌嗣社長(左)と鈴木敏通チャネル営業部部長