都市型データセンター事業で15年の経験をもつビットアイル。従来、同社はウェブインフラの直販を中心としていたが、近年業務インフラとしてのクラウド需要が高まっていることから、SIerなどをパートナーとする間接販売の体制を強化した。クラウドの“ハブ”となることを目指すという。(日高彰)
東京・大阪に複数のデータセンター(DC)を展開するビットアイル。今年3月には、都内の飯田橋駅から徒歩10分という好立地に1400ラック規模の「文京エリア第5DC」を開設した。近年例のない都心のど真ん中でのDC新設として話題になった。
川島雄一・営業本部パートナー営業部長によると、「『DCは都心かつ免震で』という条件が、エンドユーザーから寄せられることが増えてきた。海沿いのDCがNGというケースもあり、文京エリアの第4・第5DCが選ばれる決め手にもなっている」という。同社は従来、ゲームやECサイト、広告配信といったウェブコンテンツ系のユーザーが主要顧客だったが、都心に拠点をもつという同社の強みから、金融や官公庁のシステムを手がけるSIerによる利用が拡大している。多くのSIerは自社のDCを所有しているが、それでも「都心を」というユーザーの要求から、あえてビットアイルのDCやクラウド基盤を利用する例があるという。また、通信事業者やISPがビットアイルの拠点内に自社のDCを構築する「DC in DC」の提供形態も増えており、クラウド時代になって都心の地の利がますます強力になっているようだ。
そして、同社のもう一つの特徴となるサービスが、複数のDCやクラウド基盤をプライベートネットワークで接続する「ビットアイル コネクト」だ。これはユーザー専用の仮想スイッチを介して、ビットアイルの拠点と、AWS、Azure、SoftLayer、ニフティクラウドといったパブリッククラウド、そしてユーザー拠点を結び、複数のIT基盤をセキュアな環境で相互に利用できるようにするものだ。
前述の通り、かつてはウェブ系のユーザーが多かったことから、同社では直接販売が中心だったが、通信事業者・SIerへと顧客層が広がったことで、パートナーとその先にいるユーザーを意識した営業スタイルが求められるようになり、今年「パートナー営業部」を新設した。
最近のSI案件では、クラウドやオンプレミスにまたがる複数システムの接続が求められることが多く、いわゆるマルチクラウドへの対応が課題となることが多い。川島氏は「ビットアイル コネクトを活用いただくことで、マルチクラウドをスモールスタートしていただける」と話し、まず同社に接続すれば、その先にあるさまざまなクラウド基盤を容易に利用できる点を強みとして、SIer各社とのパートナーシップを拡大していく方針だ。
加えて、単にDCを使ってもらうだけでなく、パートナー側により大きなメリットとなるスキームを同社では構築したいと考えている。(つづく)

川島雄一・営業本部パートナー営業部長(右)と鈴木大昌・営業本部営業推進部営業企画グループ課長