2009年からパブリッククラウドを提供しているIDCフロンティアは、日本のクラウド事業者としては草分け的な存在。物理サーバーとIaaS基盤を自在に利用できる拡張性と性能を強みとしており、今後はそのうえにパートナーのビジネスチャンスを生む仕かけを加えていく方針だ。(日高彰)
首都圏6か所と大阪(吹田)・福岡(北九州)・福島(白河)を合わせた計9拠点のデータセンター(DC)を擁するIDCフロンティア。とくに、北九州と白河の拠点は外気空調などの省エネルギー設備を導入した最新鋭の大規模DCとなっており、今後の需要増に応じて建物を増設できる広大な用地を確保している。
変遷を経て現在はヤフー傘下となっているが、かつては通信事業者だった経緯もあり、今でもネットワークに強いDC事業者として知られている。総容量510Gbpsの高速・大容量ネットワークで主要IX・ISPと接続しており、ユーザーの拠点からの接続性も高い。
同社の石田誠司・取締役カスタマーサービス本部本部長は、「当社サービスでは、ゲームなどのエンタテインメント企業や、ECサイトなど、突発的に発生するトラフィックのピークに耐えられるインフラを求めるユーザーが多い。また、ネット金融業での採用も増えており、高い信頼性も要求されている」と話し、高性能なインフラを需要に応じて自在に提供できるのが、同社の強みと説明する。
コロケーションサービスと、高性能なクラウド基盤の両方を共通の拠点で提供している点も評価が高い。ユーザーは、DC内に構築した自社のプライベートクラウド環境などを利用してサービスを提供しているが、ピーク需要に対応するためにはそれだけでは足りないケースも多い。そのとき、同じDCで提供されているパブリッククラウドのリソースを組み合わせることで、自社環境のキャパシティから溢れた負荷を逃がすことができるというわけだ。このようなニーズに対応するため、必要なときに必要なリソースをすぐに提供できるよう、仮想マシンにもチューニングを重ね、業界最速レベルの起動速度を実現しているという。
また、同社のDCやパブリッククラウドと、ユーザーのオフィスや外部DCとの間を相互に閉域で結ぶことも可能。クラウドインターネットを経由せずにオンプレミスの基幹系システムとパブリッククラウドを連携できるほか、業務システムの段階的なクラウド移行にも有用な構成だ。IDCフロンティアでは、広域負荷分散のサービスも提供しているため、国内複数のDC拠点でシステムを冗長化し、障害発生時や天災に備えたディザスタリカバリ環境として活用することも可能だ。
ただ、このような機能的な特徴は、他のDC・クラウド事業者のサービスにも共通する部分があり、SIerやISVからみた場合、性能だけでは採用の決め手にならないこともある。そこで同社が新たに打ち出すのが、パートナー各社が提供するクラウド向けソリューションを流通・連携させる、マーケットのような協業モデルだ。(つづく)

石田誠司・取締役カスタマーサービス本部本部長(左)と霜鳥宏和・ビジネス開発本部パートナーセールス部部長