メディアミックスは、データセンター(DC)関連ビジネスで業績を伸ばしているSIerである。DC設備のなかで保守・運用や、業務アプリケーションの改修、ヘルプデスク(問い合わせ対応)などのサービスを手がけるBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)が好調に推移。もともと得意としてきた業務システムの開発のノウハウを、DC向け保守BPOサービスに組み込むことで、ハードウェアだけでなく、業務アプリケーションにも精通したサービス体系が顧客から高い評価を得て、ビジネス拡大につながった。(取材・文/安藤章司)
Company Data会社名 メディアミックス
所在地 東京都新宿区
資本金 2500万円
設立 1995年1月
社員数 約114人
事業概要 「Microsoft Dynamics」シリーズを活用した業務システム構築を得意とする開発系SIerであると同時に、データセンター(DC)向け保守アウトソーシングサービスでも業績を伸ばしている
URL:http://www.mm-p.co.jp/ サービス、ソフト面にチャンス

写真左からメディアミックスの小湾喜代宗部長、和知哲郎社長、三谷千兼取締役 メディアミックスがデータセンター(DC)ビジネスに着目した背景には、2000年代後半に最新鋭DCの建設ラッシュがあったことと、これに呼応するようにより多くの情報システムが安全で堅牢なDCで運用されるようになったことがある。さらに、団塊の世代の一斉退職の時期とも重なったことから「当社の参入の余地が大きい」(メディアミックスの和知哲郎社長)と判断した。
保守サービスはメインフレーム時代から綿々と続く業務だが、その多くは“ハードウェア保守”だったことから、「ベテラン保守マンではあるものの、電子メール一つ満足に送れない現場もみてきた」(メディアミックスの小湾喜代宗・営業部部長)と、DC内部のサービス面、ソフト面では慢性的な人材不足に陥っている姿を目の当たりにする。
メディアミックスでは、ここにビジネスチャンスを見出し、DC内部でのハードからアプリケーションソフトまでを一気通貫、フルアウトソーシングで請け負うビジネスを積極的に展開した。11~12年頃にはシステム開発(SI)とDC保守の売上比率が半々となり、直近では7割近くをDC向けの保守BPOビジネスが占める。ここ数年は年率10%程度で売り上げも伸びており、DCを軸とした同社ならではのビジネスモデルを確立させている。
粘り強く社員の意識を改革
しかし、ここまで来るのに戸惑いや葛藤も少なからずあった。同社は「Microsoft Dynamics」シリーズを使った業務システム構築を得意とする開発系SIerの顔をもつ。一方、シフトを組んで24時間体制で仕事にあたるDC向け保守BPOは、「これまで当社が手がけてきた勤務体系や価値観とは大きく異なる部分があった」(三谷千兼取締役)と振り返る。SEやプログラマを志す者のなかには、“開発は一線級、保守は二線級”の技術者があたるとの偏見も根強くあり、優秀な技術者が集まりにくいことも知った。
SIerにとっては、優秀な技術者をいかに多く採用し、育てていくかが競争力の源泉となる。堅調な景況感に後押しされるかたちで、ここ数年の情報サービス業は人材の奪い合い。大手との人材争奪戦となると、「どうしても不利になる」(和知社長)と悔しい表情を滲ませる。そこで、取り組んだのが開発から保守まで一貫して手がけることだ。他社との差異化になるし、DCでの保守BPOサービスは、社会インフラを支える重要な仕事と訴え、社員の意識改革を促した。開発と保守の担当者の報酬もできる限り差をつけないよう心がけた。
大手コンピュータメーカー系、通信キャリア系、鉄鋼系などさまざまな系列のDCがあるが、共通していえるのは「身内意識がとても強い」(同)ことだ。開発の現場ではそれほど感じられなかったが、DCという窓すらない閉ざされた空間で、昼夜問わずに作業をし、人知れず重要な社会インフラを支える──。こうした特殊な環境が仲間意識を通り越して、家族のような感覚を芽生えさせるのだろうか。最初にDCの仕事を受注するとき、和知社長がまず言われたのが「誰の紹介で来た?」だった。
DCでの“お作法”の存在を知る
開発メインで会社を立ち上げた和知社長が、DCでの“お作法”のようなものを知ったのは、同氏が初代理事長を務めた業界団体「日本情報サービスイノベーションパートナー協会(JASIPA)」の委員会活動がきっかけだった。その後、人づてに紹介してもらいつつ、DC向け保守BPOサービスの本格的な受注に結びつけた。
また、事業継続計画(BCP)や災害対策(DR)で、同時被災の可能性がない遠隔地にバックアップ拠点を設ける動きを先取りするかたちで、沖縄DCの保守BPOにも着手。あわせて沖縄での採用活動を積極的に行っていて、直近では沖縄出身の社員数が35人に増えた。現段階ではその多くがまだ首都圏で技術習得のための“修行中”だが、近い将来、沖縄に独立した会社をつくって、「一大BCP拠点になりつつある沖縄DC向けの、保守BPO事業も拡大させていきたい」(和知社長)と意欲を示す。