「昼食後は眠くなる。だったら、寝たほうがいい。ウトウトしながら仕事をするのは効率が悪い」と、コー・ワークスの淡路義和社長。同社は社員に昼休みを奨励している。オフィスのイスには、しっかりリクライニングできるものを選んだ。淡路社長は、会社員時代に「昼寝をしていて上司に怒られた」。理由を説明したが、逆に組織としてのあり方を説かれることとなる。正論ではあるものの、それでいいのか。小さな疑問の一つひとつが、同社の“上流志向”を支えている。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 コー・ワークス
所在地 宮城県仙台市
資本金 1000万円
設立 2009年4月
社員数 30人(契約社員含)
事業概要 システム開発事業、パブリックソリューション事業、ITコーディネート(経営コーディネート)事業、エンベデッド事業、情報提供サービス事業など
URL:http://www.co-works.co.jp/ 上流工程を目指す

淡路義和
代表取締役社長 大手IT企業の会社員時代、淡路社長は必ずしも顧客の立場で提案できていないことに忸怩たる思いを抱いていた。「本当に顧客のためと思うなら、競合企業のソリューションを提案することがあってもいいはず。もちろん、ありえないことだと理解しているが、最適なソリューションではなく、売りたいソリューションを提案することに違和感があった。もっと顧客の立場で、顧客目線で提案したい」。これが起業の動機につながっていく。
会社員を辞め、クレープ屋やソフトハウスなどで経営を学んだ後に、2009年4月にコー・ワークスを3人で設立。最初に取り組んだのはSES(System Engineering Service)だが、すぐに上流工程を目指すようになる。
「仙台には3次請けや4次請けが中心で、大手企業に従属していかないと生き残れない企業がたくさんある。仲介だけでマージンを稼ぐ仲介業者を理不尽だと思っていても、結局、下請けを選択している」。SESには安定した収益を獲得しやすいというメリットがあるものの、人件費の単価が抑えられてしまう。「上流工程はリスクがあるものの、見返りも大きい。仕事の幅も広がるし、結果的に会社の成長につながる」と淡路社長。上流工程を志向し、人づてで案件を紹介してもらうなど、とにかく元請け案件にこだわった。事業が軌道に乗った現在では、元請けにとどまらず、さらに上流のコンサルティングの案件も多くなっている。
「重要なのは、当社の都合ではなく、顧客の立場で考えるということ。顧客目線で提案できれば、顧客に必要とされる存在になる」と、会社員時代にやりたくてもできなかったことを淡路社長は実践している。
ITCでさらに上流へ
元請けからさらに上流のコンサルティングへ。それも経営コンサルティングとして、仙台を中心とする東北の企業からの依頼が多くなっているという。「水産加工場をいくつももっているような企業でも、キャッシュフローをしっかりと把握していないケースがある。資金がショートしてから、あわてて親戚に借りにいくというようなことも。あらかじめキャッシュフローを把握していれば、資金は銀行から調達できる。そういった基本的なところにもコンサルティングのニーズがある。必ずしも、ITありきではない」とのこと。経営者の立場で経営課題の解決に取り組んでいるのである。
コー・ワークスがコンサルティング業務に取り組むにあたって、重要視しているのがITコーディネータ(ITC)資格認定制度。「ITCは、経営者の立場でITを捉えるため、上流工程に取り組むきっかけとなる。経営者とのコミュニケーションは、さらに上流工程へと、エンジニアの意識を変えることにもつながる」と、淡路社長はITCのメリットを語る。コー・ワークスでは6人がITCを取得していて、4人が資格取得に取り組んでいる。いずれは、全社員に取得させる予定だ。
コー・ワークスは“自立”を企業理念に掲げている。決して、独立を推奨しているわけではないが、個々の自立を促すべく育成する組織を目指している。有効であれば、昼寝も奨励する。ITCの取得もその延長にある。
東北の活性化に寄与したい
淡路社長が上流工程にこだわるのには、もう一つ理由がある。それは「仙台、そして東北の活性化に寄与したい」ということ。仙台のSIerは、仙台に民間企業の案件が少ないこともあって、ほとんどが首都圏の案件に頼っている。それでも東北の活性化に貢献するものの、淡路社長は「東北の企業を元気にする」ことを目指している。だからこそのコンサルティングだ。
「ITは本業を支援する存在でしかない。だから、ITが本当に必要かどうか。まずはその見極めから始めるようにしている」。起業の動機の一つである「本当に顧客の役に立つ提案をしたい」は、システム開発からコンサルティングへと拡大し、今もぶれることなく前に進んでいる。