IT機器のグローバルブランドへと成長した台湾のASUSTeK Computer。日本法人のASUS JAPANでは、コンシューマ市場で高めた品質と認知度を武器に、法人向けビジネスの拡大をねらっている。タブレット端末の用途拡大やSIMフリー端末市場の盛り上がりなど、追い風となる要素は多い。(日高 彰)
PCはもちろん、タブレット端末やスマートフォンの世界でも多数のヒット商品を生み出し、台湾発のグローバルブランドとして最も成功した1社に数えられるASUS。法人向けにも前述のPCやモバイル機器のほか、同社の液晶ディスプレイ製品を活用したデジタルサイネージ端末、Chromebook、サーバーなど、さまざまなIT機器を幅広く提供している。
直近の日本市場では、企業向けにも「ZenPad」などのタブレット端末が好調だ。背景としては、従業員自身が業務のために使うだけではなく、商品説明や契約などの際に、一般顧客が触れるサービス端末としてタブレット端末が用いられるケースが増えていることなどが挙げられる。ASUS製品の品質はすでにコンシューマ市場で定評を得ており、顧客が直接操作する場面でも十分なユーザーエクスペリエンスを提供できる。また、製品シリーズ内に7型、8型、10型といった幅広い画面サイズの端末を取り揃えていることから、システムベンダーやサービス事業者にとっては、自社のソリューションと組み合わせて提供する端末として使い勝手がいいのだという。
加えて、携帯電話会社の販路を経由しない「SIMフリー」のモバイル端末や、MVNO各社の「格安SIM」が、日本でも市場を確立したことも同社にとっては追い風だ。コストが理由で従来型携帯電話を使い続けている企業も、SIMフリー端末やMVNOのサービスを活用すれば、通信費を抑えたままスマートフォンによる業務効率化を図れる可能性がある。ASUSのSIMフリー端末は国内の通信規格に対応しており、価格と性能のバランスもいいことから、企業の「携帯リプレース」需要も期待できる。
同社コーポレート事業部の鈴木真二・事業部長は、「従来IT製品の多くは、メーカーの側で“個人向けモデル”“法人向けモデル”と切り分けられていたが、その手法が現在の市場で本当に求められているのか」と話し、こと情報端末の分野においては、個人・法人両市場の要求がかなり接近していると指摘する。
実際に、同社製品を取り扱うパートナー各社からは、従来法人市場で求められることが多かった「同一製品の長期にわたる供給」よりも、「最新の製品ラインアップについて可能な限り早く情報を開示してほしい」といった要求が強く寄せられているという。いいデバイスをいち早くビジネスに取り込むことで差異化を図れるという考えが広がりつつあるようだ。
しかし、情報端末はコモディティ化が著しい領域でもあり、製品単体で法人市場における拡販を実現するのは難しい。ASUSでもパートナーとの協業による付加価値向上を戦略の要に据えている。(つづく)

サービス端末としての法人導入も増えている「ZenPad」。
複数の液晶サイズを用意し、いずれのモデルでもWi-Fi/LTEを選択可能