PCやタブレット端末、スマートフォンなどが国内でも人気を集めているASUSが、法人市場でも存在感を高めている。製品単体で企業向けの拡販を実現するのは難しいが、業種ごとにパートナーとソリューションをつくり上げ、互いのノウハウや販路を活用することで実績を積み重ねている。(日高 彰)

鈴木真二
コーポレート事業部
事業部長 ASUSでは、他の多くのIT製品ベンダーと同様にパートナープログラムを設け、パートナー企業との協業によって法人市場でのビジネスを拡大しようとしている。ただ、従来OA機器の拡販策でみられたような台数コミットの獲得を目的とする動きではなく、あくまでソリューションとしての価値を高めるため、ハードウェアメーカーの立場で可能な支援をできるだけ手厚く行う、というのが基本的な考え方だ。
例えば、シンクライアント環境の構築を行っているSIerとの協業で、金融や公共向けにノートPCを提供する例が増えているという。ノートPCをシンクライアント端末とする際、Windows Embeddedをカスタマイズして搭載することが多いが、その場合PCに初期搭載されているOSのライセンスコストが無駄になる。ASUSではこのような案件に対して、パートナー向けにOSレスでのPCの出荷に応じているほか、技術的なサポート体制も用意している。また、従来型のノートPCだけでなく、タブレット端末としても使える2ーinー1タイプのデバイスなどもシンクライアント用に提供可能だ。グローバルベンダーの品質やコストメリットを生かしながら柔軟な対応を行うことで、パートナーのソリューションのなかにASUSの製品を組み入れてもらう。ユーザー企業に対しては、ASUSとパートナーの両方の販路を活用し、ハードウェア込みのワンパッケージとしてシステムを提案している。
文教市場も、ASUSが戦略的に注力する領域の一つだ。同社は、Chromebookメーカーの1社だが、米国などでChromebookは学校用の教育端末として支持を得ていることから、ウェブを通じた教材配信などの仕組みと合わせることで、低コストかつ管理が容易な教育向け情報システムとして国内でも展開を図っていく。
ASUS JAPANで法人向け事業を統括する鈴木真二・コーポレート事業部事業部長は、「個別の案件に対する製品の提供はどのベンダーも行っているが、協業によって各業界を深く攻略できている例は多くない」と指摘。特定業種のデファクトスタンダードとして導入されるようなソリューションをパートナーとの協業でつくっていきたいとしている。
同社ではすでに約10社とパートナーシップを結び、さまざまな業種の企業へのシステム提案を図っているが、この動きをさらに加速し、今年度は新たに10社のパートナー獲得を目指す。また、「すぐれたソリューションは世界のどの市場からも求められている」(鈴木事業部長)ことから、ASUSの販路を活用して、国内で成功したソリューション事例を海外へ展開することにも取り組んでいきたいとしている。