BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)大手のトランスコスモスは、コンタクトセンターでのAI(人工知能)の活用を積極的に進めていく方針だ。コンタクトセンターは、顧客との会話記録など構造化されていない情報を扱う割合が高く、これら情報を「AIによって効率的に活用していきたいという要望が根強くある」(トランスコスモスの清水一洋・理事サービス推進本部CTO室副室長)ことから、今年2月、「IBM Watson」の「エコシステム・パートナー」となってWatsonの活用に取り組んでいる。(取材・文/安藤章司)
Watsonに期待している主な点は、(1)コンタクトセンターのオペレータの作業負荷の軽減(2)会話レポートの自動作成(3)営業や販促でエンドユーザーに電話をかけるアウトバウンドでの成功率の向上の三つ。
エンドユーザーから問い合わせがあった場合、オペレータが最適な回答ができるようWatsonが支援したり、ユーザーとの会話記録をWatsonが自動的に作成すれば、客観性が高まるとともに、オペレータの作業負荷も軽減できる。
さらに、例えば「エンドユーザーのAさんのプロファイルによれば、午前中の何時頃に電話をすれば成約率が高まる」などと推論できれば、アウトバウンド営業/販促の効果を高められるというわけだ。
従来のCTI(コンピュータと電話の融合)システムでも、オペレータ支援を行っていたが、Watsonとの最大の違いは「推論できるかどうか」(トランスコスモスの西井尊雄・営業企画推進ユニット長代理)と話す。CTIでは顧客管理や営業支援システムとの情報連携を得意とし、トランスコスモスでも採用しているが、過去のデータやプロファイルから学習し、推論や予測を行うことができるのは、やはりAIの機構が欠かせない。
また、コンタクトセンターを運用するトランスコスモス自身のビジネスにとっても、Watsonは有効に作用するとみられている。常に顧客と相対しているオペレータはストレスを抱えやすく、離職率が高くなりがちなことが懸念事項となっている。そこで、離職につながるストレスを抱え込む兆候をWatsonに学ばせて、離職に至る前にストレスを軽減する施策を打つ。これができれば、「離職率を低く抑えられる可能性がある」(清水理事)と期待を寄せる。

トランスコスモスの清水一洋理事(右)と
西井尊雄ユニット長代理
コンタクトセンター運営者にとって、人手不足に陥ることは深刻な課題であり、優秀なオペレータをいかに多く確保するかがビジネスを伸ばすカギを握る。今はオペレータを取りまとめるマネージャー(管理者)の裁量で離職率を抑えているが、Watsonでマネージャーを支援できれば、より効果が高まるとみている。