この半年ほどで耳にする機会が飛躍的に増えたブロックチェーン。単にFinTech領域のイノベーションという位置づけを超えて、「インターネット以来の革新をもたらす」汎用性のある技術だと評価する声も少なくない。本連載では、黎明期にあるブロックチェーンの市場立ち上げに先進的に取り組むITベンダーの動きを追う。(本多和幸)

インフォテリア
平野洋一郎
社長 インフォテリアは、主力であるデータ連携ツール「ASTERIA WARP」を、既存のシステムとブロックチェーンをつなぐツールとして市場に訴求していくことで、新しいビジネスの拡大を目指している。具体的な動きとしては、昨年12月、国産初のプライベートブロックチェーン 「mijin」を開発・提供するテックビューロとの業務提携を発表(後に資本参加も)。今年5月には、共同で開発を進めてきたmijinとASTERIA WARPの接続アダプタをリリースしたほか、今年1月から、mijinとASTERIA WARPを組み合わせた実証実験環境を、さくらインターネットの協力のもと、クラウド上で無償提供してきた。現在は、この実証実験環境で接続アダプタも使えるようになっている。また、mijinを基盤とした複数国間決済ソリューション「Transaction Ecosystem Platform Solution(TEPS)」などの金融サービスを手がけるシンガポールのフィンテック企業、Dragonfly Fintechとも事業提携している。
ブロックチェーンについて、既存の技術では実現できない新しいサービスを生み出す基盤になると評価する声は、エンタープライズITの世界でも広く聞かれる。インフォテリアの平野洋一郎社長はこれに加え、既存のシステムの一部を非常に低コストで代替できる技術としても、ブロックチェーンを普及させたいと考えている。例えばテックビューロは、「mijinを使えば、(ハードウェア自体の)堅牢制や冗長化、バックアップなどが必要なくなるためITインフラのコストを従来比で大幅に削減できる」と謳っていて、2018年までに金融機関のインフラコストを10分の1にすることを目標に掲げている。すでに、住信SBIネット銀行の実証実験で、mijinを勘定系業務にも適用できることが実証されたとも発表している。テックビューロと密接に連携しているインフォテリアとしては、そうした価値観を共有しているのが自然だといえよう。
既存技術の代替にも期待
平野社長は、「データ追記型のデータベースに関しては、金融に限らずあらゆる業界でブロックチェーンを代わりに使うことができるだろう。将来的には、さまざまなブロックチェーン技術、さまざまなクラウド環境をニュートラルにASTERIA WARPでつなげられるようにしたい」と話す。
ただし、新技術で既存技術の市場を塗り替えていこうとすれば、抵抗も生まれる。
次号では、インフォテリアなどが主導するブロックチェーンの普及に向けた取り組みを紹介する。