コンピュータソフトウェア協会で知り合いになった方に導かれて、全国設備業IT推進会というITユーザーの団体でクラウド普及活動に関わることになった。ITユーザーの団体といっても、失礼ながら、実際にはITがなかなか浸透しない業界の団体というべきだろう。これまでも会員の皆さんへのIT普及のために関係者の方々が不断の努力を重ねてこられたようだが、新たにクラウドを加えることでITの普及促進を図ろうと「クラウド普及委員会」が設立された。
そのような経緯から、「クラウド普及委員会」の活動の方向性を見定めるため、設備業のなかでもとくにITに詳しい若手の経営者をお招きして意見交換会が開かれた。そこで、個々のクラウドサービスについてその機能や良否を論じるのではなく、パソコンとスマートフォンをつなぎ、人と人、組織と組織をつなぎ、そしてクラウドとクラウドをつないで、事務作業や現場作業をどのように効率化できるかという視点に立つご提案をさせていただき、そのような活用例をいくつかお話ししたところ、参加された経営者のなかから、それであれば自分たちはすでにクラウドを活用しているという発言があった。それは、無料のリモートアクセスサービスを使って、自宅や出先でスマートフォンから会社のパソコンへアクセスし、電子入札を行っているというものである。その他にもいろいろとご意見をうかがいながらわかってきたことは、設備業という小規模事業者の経営者のなかには、思っていた以上に、クラウドそれも無料のクラウドサービスを活用されている方々がおられるという事実である。しかしながら、それは個人での利用であり、組織として利用されているというものは今回の意見交換会ではうかがうことができなかった。
ここに小規模事業者を対象としたクラウド普及活動のカギがあると思う。事務作業や現場作業の生産性を高めるためにITを活用するには、個人による利用に始まって、組織的に利用できるような環境を整備しなければならない。それには、人、組織、パソコン、スマートフォン、クラウドを相互につないで利用する仕組みが必要だが、これまではIT専門家がそれを担ってきた。ところが、今では、それが簡単にできるクラウド環境が整ってきている。この「つなぐ」クラウド環境が小規模事業者によるIT活用のカギの一つになると、私は考えている。
一般社団法人みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴

松田 利夫(まつだ としお)
1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。