日本データセンター協会と東大グリーンICTプロジェクトで共催している「次世代データセンター勉強会」の活動の一環で、中国深センにある阿里巴巴集団(アリババ)と華為技術(ファーウェイ)の本社と工場、広州市にある中国聯合通信のデータセンタ(DC)の視察を行った。
中国国内には、DCが40万か所以上存在しているといわれており、今でも精力的に大規模なDCが建設されている。アリババや中国聯合通信の大規模なDCは、600MWクラスだという。日本のDCと比べれば工事の品質などは劣るが、規模の大きさとビジネスの活況ぶりが強く感じられた。また、オープンな技術仕様にもとづいた最先端のモジュール型DCや直流給電技術など、新しい技術への挑戦も行っており、グローバルな観点では、キャッチアップの段階ではなく、競争の段階にあることが認識できた。
また、ファーウェイの研究開発は世界最先端レベルにあることを確認できた。工場は日本や欧米の生産技術の導入と改善によって、日本の最先端工場と肩を並べるか、それ以上の清潔さ・効率性・品質管理・行程管理・自動化(ロボット化)が実現されていることも確認できた。
もう一つ、参加者の方々が驚嘆されたのは、深センにある電気街である。昔の秋葉原、台北市や香港の電気街と比べてもはるかに大規模な電気街だ。スマートフォンや電気自転車、IoT機器ばかりではなく、これらの製品を構成する部品群や、製品の修理やアップグレードなど、実にさまざまな店が、ビジネス領域ごとに集まっており、大量購入された製品や部品は、電気街内に存在する物流会社の拠点から、中国国内外に出荷されていた。また、深センでは、電気自転車の数が非常に多く、音を出さずに高速に交通ルールを無視した動きをする自転車が夕方から夜にかけて街中や道路を走りまくっている。さらに、自転車の形をしていない、セグウェイのようなものやサーフボードのような電気乗り物が街中を行きかっている。
中国全体でみれば、減速感があるのであろうが、少なくとも深センに関しては、変調状況になっているといわれている不動産ですら、活況な市場環境であることを実感できた。先端技術の導入・利用がますます加速している中国深センの活況ぶりであった。
東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 江﨑 浩

江崎 浩(えさき ひろし)
1963年生まれ、福岡県出身。1987年、九州大学工学研究科電子工学専攻修士課程修了。同年4月、東芝に入社し、ATMネットワーク制御技術の研究に従事。98年10月、東京大学大型計算機センター助教授、2005年4月より現職。WIDEプロジェクト代表。東大グリーンICTプロジェクト代表、MPLS JAPAN代表、IPv6普及・高度化推進協議会専務理事、JPNIC副理事長などを務める。