既存ビジネスモデルの破壊か、進化か? ブロックチェーンの革新
<既存ビジネスモデルの破壊か、進化か? ブロックチェーンの革新>(14)ブロックチェーンの現状と課題、識者はどうみる(1)
2016/10/12 16:04
週刊BCN 2016年10月03日vol.1647掲載
ブロックチェーンの可能性についての議論が活発化している。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)のシンポジウムでは、識者から示唆に富んだ意見が数多く飛び出した。(取材・文/本多和幸)
GLOCOMは9月8日に都内で、シンポジウム「ブロックチェーン・イノベーション2016」を開催し、ブロックチェーンの現状と課題について識者が最新の知見を披露した。イベントを締めくくったパネルディスカッション「ブロックチェーンの安全性と汎用性を考える」では、エンタープライズITにおけるブロックチェーンの適用可能性について活発な議論が聞かれた。
まず問題提起をしたのは、サテライト中継で議論に参加した松尾真一郎・MITメディアラボ研究員だ。松尾研究員はブロックチェーンの現状をどうみているかについて、「安全性を含めて、ブロックチェーンは技術的に何が整っていると本当に“いいブロックチェーン”なのかは定まっていないのが実情。普通の情報システムでさえ、セキュリティと性能はトレードオフの関係にあるが、ブロックチェーンはどのくらい非中央集権的なシステムにするかとか、セキュリティ、プライバシー、スケーラビリティなど六つくらいの要素でトレードオフの関係がある。これをどうバランスさせていくべきかというのはユースケースによって異なっていて、それぞれ異なる条件に従ってチューニングをしていくというのが本当の使い方だろう」と見解を述べた。
暗号プロトコルの数学的な安全性の証明はすごく難しい
一方で、「私自身の専門である暗号技術の観点でも課題は多い。ブロックチェーンは暗号技術を使ったプロトコルだが、暗号プロトコルの数学的な証明や安全性の証明というのはすごく難しくて、ブロックチェーンに関してもそれはまだ証明されていないため、穴があるかもしれないとはいえる」ともコメント。さらに個別の暗号技術についても不安要素を挙げ、「例えば楕円曲線暗号を使っているが、それのパラメータが本当にこれでいいのかとか、中期的にいうと、過去の例ではハッシュ関数というのは20~30年すると破れる運命にあるケースが多いが、それにどう対応するのか、長期的にいうと量子計算機などが実用化された時にどうするのかとか、実は誰も考えていなかった」として、とくにパブリックブロックチェーンについては「まだまだ理論や議論を積み上げていかなければならないのが現状だ」と訴えた。
ブロックチェーンのなかには相反する条件が複数共存しているため、どうバランスを取ることで現実の情報システムに落とし込んでいくのかが重要で、暗号技術そのもののリスクも含めて解決すべき課題は少なくない現状を指摘したかたちだ。
ブロックチェーンの可能性についての議論が活発化している。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)のシンポジウムでは、識者から示唆に富んだ意見が数多く飛び出した。(取材・文/本多和幸)
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