「現在も未来もソフトウェアロボットの開発・販売に注力する事業方針は変わらない」と、アルゴスサービスジャパン(アルゴス)の佐藤茂之代表取締役社長は断言する。オンラインサービス市場では、ネットワークサービスの性能測定や監視、試験の品質管理を人海戦術で対応してきた。オンラインサービス企業が抱えるこうした課題に対して、アルゴスはロボットによるサイト・アプリパフォーマンス監視・分析システムを開発。これを機に、ビジネスの成否を賭け、ネットワークサービス市場への参入を果たした。(取材・文/鄭麗花)
Company Data会社名 アルゴスサービスジャパン
所在地 東京都千代田区
資本金 1000万円
設立 2012年12月
社員数 7人
事業概要 オンラインサービス事業者向けのウェブサービス性能測定ツールの開発・販売、収集したデータにもとづき、ウェブサービス性能改善のコンサルティング
URL:http://www.argos-service.com/ 両国の技術連携で商機開拓

佐藤茂之
代表取締役社長 佐藤社長は、シリコンバレーの半導体やビデオサーバー関連の米国企業で、日本・韓国のカントリーマネジャーとしてマーケット開拓に従事するなど、長年グローバルビジネスに関わってきた。当時の韓国企業との出会いが、技術・人的ネットワークの源泉となり、アルゴスサービスジャパン設立のきっかけとなった。
コミュニケーションツール「LINE」を世界15か国(取材時点)で展開する韓国のNAVERは、グローバル市場で5~10社ほどの競合とサービスの優位性を競っている。いかに利用者が継続的にストレスを感じず、軽快に動くサービスを利用できるかというオンラインサービスの問題を事前にみつけ、解決に導く方法を模索してきた。その際に技術提供したのが、品質管理自動化ツール「ARGOS」の開発の第一歩となる。パケットの検査技術であるDPI(Deep Packet Inspection)の融合を考案し、人に替わって膨大なテスト業務を行うソフトウェアロボットを開発する。これによりコスト削減や単調反復作業のストレス軽減、ヒューマンエラー・ノイズの削減を実現した。
佐藤社長は、「オンラインサービスの開発からリリース、運用のサイクルは、すごい勢いで加速している。開発、試験、運用段階で行うユーザービリティテストのボリュームは拡大の一方だ」と話し、LINEのサービスパフォーマンス計測をきっかけに、ネット通販やソーシャルメディア、コミュニケーションツール、法人向け業務システムなど、あらゆるネットワークサービスの品質管理自動化ツールへの転用を考え、ARGOSが誕生。ARGOSはネットワーク環境や測定端末の種類・台数、利用者動線などをユーザーニーズに合わせて監視する。
佐藤社長は徹底的に日本の顧客ニーズを追求し、応えていきたいとし、「ツール自体は日本法人と韓国本社の共有財産で、一緒に6年間かけてつくってきた」と話す。また、日本と韓国は製品開発に対して、異なる文化をもっているが、両国のよさをつなげていくことが、さらなる技術力の向上やビジネスのシナジー効果の発揮につながると説明する。
品質管理の重要性
「リアル店舗では、店舗側の日々の改善努力が購買に結びつく。オンライン店舗も例外ではない」と佐藤社長は話し、日本の大手小売チェーンを展開する企業幹部との話を例にあげ、オンラインサービスも継続的な日々の改善努力が必要だが、IT技術の壁が高くリアル店舗と同様なスキルで管理できていないと指摘する。
「汎用的なネイティブアプリの品質管理ツールは数少なく、アプリ自体に品質管理ツールを組み込むなど、システム改造を要するのがほとんどだ」と佐藤社長は話す。ARGOSはデバイス間のパケット通信データを吸い上げるので、エンジニアリングスキルがない担当者でも、簡単にサイトのパフォーマンスを測定できるという。
「パケット通信の非常に細かいデータが取れるので、どこに問題があるかすぐわかる」(佐藤社長)。ARGOSは測定端末(PCやスマートフォンなど)上で稼働し、センターサーバーから送られたシナリオに沿って測定する。「取得したデータを分析し、改善することで、ビジネスの機会損失を未然に防げる」と佐藤社長はアピールする。
市場を熟知した強力なパートナー
今年の5月にモバイルインターネットサービスを手がけるネオスがアルゴスと業務提携し、日本国内における総販売代理店として拡販に注力。ネットビジネス市場を熟知したパートナーとの連携で、拡販に弾みをつける。ARGOSの日本市場におけるサービスの本格的展開は2016年以降だ。クラウド型サービスとして、ロボット数や計測企業数など、必要内容に応じて料金体系が変わる。
「人類より遥かに多いデバイスがネットワークにつながる時代を迎える」と佐藤社長。ネットワークを介して、さまざまな「モノ」がコミュニケーションをつくり出すなか、膨大に発生する情報量に対して、人に替わるロボットが品質管理を行い、サービスの改善につなぐネットサービス性能測定・監視・試験の自動化ツール製品開発を突き進めていく考えを示した。