既存ビジネスモデルの破壊か、進化か? ブロックチェーンの革新
<既存ビジネスモデルの破壊か、進化か? ブロックチェーンの革新>(15)ブロックチェーンの現状と課題、識者はどうみる(2)
2016/10/19 16:04
週刊BCN 2016年10月10日vol.1648掲載
前号に引き続き、国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)のシンポジウムから、ブロックチェーンの安全性と汎用性に関する識者の指摘をピックアップして紹介する。(取材・文/本多和幸)
MITメディアラボ研究員の松尾真一郎氏の後を引き継ぎ発言したのは、ヤフーCISO Boardの楠正憲氏だ。経済産業省「ブロックチェーンに関する検討会」の委員を務める同氏も、松尾氏同様に「ブロックチェーンの安全性は学問的にはまだそれほど詰められていない状態だと認識している」とコメント。続けて、次のように補足した。
「なぜビットコインの安全性をなかなか学術的に説明できていないかというのは、けっこう根深い、哲学的な問題があると思っている。ビットコインというのは、運営者がいない、脱中心的な貨幣システムをつくっていこうという取り組みだが、これまで暗号化技術などで追求されてきた安全性というのは、現実の(中央集権的な)権力構造をどうやって電子の上に持ち込んでいくかということを前提としたもの。こうやれば学問上安全は担保されるという、そうした既存の議論の積み重ねをビットコインはまったく意識していないので、安全性を新たにどうやって定義していくのかを考える必要がある」。
情報システムの設計プロセスを大きく変える可能性
とはいえ、ビットコインの時価総額(流通しているすべてのビットコインを合計した価値)は1兆円規模に達しているといわれ、7年間もの間、止まることなく運用されてきた。楠氏は、「もともとブロックチェーンはビットコインのためにつくられたわけだが、ブロックチェーンを設計した中本哲史(ビットコインの発明者名で、国籍、本名かどうかも含めて正体は不明)は、ブロックチェーンが何が苦手かをわかったうえで、ビットコインの周辺のいろいろなルールをつくっている。これは実によくできている」とも話す。
従来の情報システムは、あたりまえといえばあたりまえだが、「業務を動かすためにどうやってデータやシステムを組み立てていくかという世界だった」(楠氏)が、ブロックチェーンはこれを変える可能性があるという。楠氏は、「ビットコインの世界では、先にビットコインのデータ構造とそれにつながっていく情報システムがあって、最後に業務フロー(を設計する)という順番になっている。たくさんの異なるシステムをつなげていくうえでは、そういうビットコインのようなシステム設計の順番が非常に有効な可能性があって、テストの工数を減らしたり、信頼性を上げていくにも役に立つはず。そういった応用は今後増えてくると考えている」と指摘する。ブロックチェーンのアーキテクチャがこれからの情報システムに与える影響は大きいというのが、楠氏の見解だ。
前号に引き続き、国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)のシンポジウムから、ブロックチェーンの安全性と汎用性に関する識者の指摘をピックアップして紹介する。(取材・文/本多和幸)
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