日本情報技術取引所(JIET)の会員向けサービスやJIET内で利用するシステムの構築や運用を担う情報システム委員会。同委員会では、2015年4月から会員が利用するシステムの刷新に取り組んでいる。新システムのポイントは、クラウドの活用にある。「JIETの会員には、クラウドを活用したシステム構築のノウハウをもっていない企業も多い。そのため、会員にノウハウを提供することもシステム構築の目的の一つとしている」と、劉桂栄・情報システム委員長は語る。
会員の提案力向上を支援

日本情報技術取引所
劉 桂栄
理事
情報システム委員長 「JIETの会員には、SES(System EngineeringService)を事業の中心としている企業が多い。SESでは顧客の要望に応じることが中心となるため、自ら提案するという意識が薄くなりがち。現時点ではそれでいいかもしれないが、将来はどうか。提案能力がないと、生き残れなくなるのではないか」という危機意識を劉委員長はもっている。
JIETは2015年4月、これまで利用してきたクライアント/サーバー型システムの刷新に向け、取り組みをスタート。クラウドを活用したプラットフォーム構築、イベント管理機能をフェーズ1として、提案を会員から募った。SES中心で受け身になりがちな会員企業に、提案能力をつけてもらうのが狙いだ。
また、新シテムでは、クラウドの活用を前提とした。先端をいく環境を活用することで、これまでにないノウハウを身につけるのが狙い。フェーズ1は当初の予定通り、15年10月にリリース。メールで行っていたイベントの申し込みと受け付けが、ウェブ上で対応できるようになった。受付リスト作成などの新機能も盛り込んでいる。あわせて、機能拡張が可能なフレームワークの開発と構築も行っていて、順調に稼働している。
次にフェーズ2としてスタートしたのは、案件・人財マッチング機能の開発。15年12月から取り組み、16年4月に運用を開始している。フェーズ2の開発では、フェーズ1とは別に、会員企業から提案を募集し、提案内容から新たな担当企業を選定した。
「開発を担当する企業は、フェーズごとに募集し、提案内容をみて、情報システム委員会で決定している。クラウドベースでの開発といった方向性を決めるのも、情報システム委員会の役割」(劉委員長)。画面の見直しや操作性の向上などもあって、利用数が案件マッチングで10%、人財マッチングで15%ほど増加したという。ちなみに、JIETは「人材」ではなく「人財」を使っている。
開発キットとして公開を検討
情報システム委員会では、フェーズ1から始まったシステム開発のノウハウをJIETの会員で共有するだけでなく、フレームワークを「開発キット」として会員向けに公開することも検討している。「開発キットを活用すれば、JIETで構築したものと同様のシステムが構築できるようにする。そのために、まずはツールとしての機能を強化して、公開する予定」と、劉委員長は考えている。
今後の開発については、フェーズ3として会員管理システムの拡張、フェーズ4としてイベントシステムの機能拡張を予定している。さらに、会員の声を聞きながら、フェーズ5、フェーズ6と進めていく考えだ。
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「JIETの方針としては、案件や人財を中心とした交流だけでなく、金融に強い、流通に強いといった各社の強みを生かすような交流をウェブ上でできるようにする予定。将来的には、各社の強みを融合した提案ができるようにしたい」と、劉委員長。会員企業の提案能力向上にも役立つと考えている。
団体の技術力のリード役に
JIETという団体のシステム管理を担うだけが、情報システム委員会ではない。クラウド活用のノウハウを会員と共有するといったことも、重要なミッションだ。「団体の技術をリードできるような委員会」であることを劉委員長は目指している。