フロンテスはソフトウェア開発における「テスト」の自動化、効率化を徹底することで生産性を高めている。自社でテスト自動化ツールを開発するとともに、SI(システム構築)にあたっては設計、開発の段階から開発とテストの担当者が密に連携。テストにかかる工数を極力減らすことでSIの効率化と品質向上を両立させている。フロンテスがテストにこだわるのは、創業者の舟崎信義社長が長年にわたってSI現場でのテストの非効率さに疑問を感じていたことが背景にあげられる。(取材・文/安藤章司)
Company Data会社名 フロンテス
所在地 東京都町田市
資本金 2000万円
設立 2005年
社員数 5人(役員含む)
事業概要 フロンテスは、ソフトウェア開発における動作確認、テスト工程を自動化、効率化することで開発の生産性や品質を高めている。開発担当者とテスト担当者がタッグを組む独自のスタイルは、創業者の舟崎社長が37年のシステム開発経験のなかで編み出したものだ。
URL:http://www.frontes.jp/ 「テスト中心主義」を打ち出す
ソフトウェアの品質維持に欠かせないテスト作業は、思いのほか工数がかかったり、人件費を削減するめプログラムの開発者自身でテストをしたり、あるいはテストそのものを第三者へアウトソーシングしたりと、課題やさまざまな試行錯誤がある。

舟崎信義
代表取締役 とりわけ、何度も開発を繰り返して完成度を高めていくアジャイル開発では、開発とテストがほぼ同時進行形で進む。この特性によって、従来のウォーターフォール型の開発に比べて、テストの回数が増える傾向にあり、テスト効率の低さが開発スピードや品質に、より多くの影響を与えてしまう。
こうしたことに長年疑問を抱いていた舟崎信義社長は、「むしろ、テストを中心に開発工程を見直す」ことを信条として、2005年にフロンテスを起業。これまで「開発の付属物」のような扱いだったテスト工程を見直し、ソフトウェアの設計、開発の段階から開発者とテスト担当者がタッグを組んでSIに臨む手法を確立してきた。テストを自動化することでアジャイル開発や、細かなソフトウェア部品を開発して、それらを連携させるマイクロサービス・アーキテクチャと呼ばれる比較的新しい手法も、「無理なく採り入れることが可能になる」(舟崎社長)と説く。
60歳のときにフロンテスを起業
舟崎社長のテスト重視の原点にあるのが1968年、大学を卒業したのちに就職した平和相互銀行(現三井住友銀行)の情報システム部に勤めていたときにさかのぼる。金融機関におけるシステム開発では数字の間違いは許されず、開発したプログラムに対して「何度も何度も動作検証を繰り返した」。当時はテストの自動化といった概念はなく、すべて手作業でテストをしていた。その後、三井住友フィナンシャルグループの日本総合研究所などの情報システム部門に携わって37年、「自分たちが蓄積してきたノウハウを次世代に伝える」ために60歳のときにフロンテスを起業した。
ソフトウェア開発の自動化技術は、数十年にわたって研究されてきた分野で、このなかでもテストの自動化は、いちはやく実用化された分野であるはずだった。
ところが実際にはテスト・シナリオをつくるのに手間がかかったり、テストツールのライセンスそのものが高額で、操作も難しかったりする課題が多く、システム開発につきものの「急な仕様変更」が起こると、プログラム開発の手直しと同等の手間とコストが、テスト・シナリオの修正にかかることもしばしば見受けられたという。
舟崎社長は、「こうなったらフロンテス自らテストツールを開発するしかない」と、自前でコツコツと自動化ツールの開発に着手。最初は市販の表計算ソフトでテスト・シナリオの管理などを行っていたが、データベース機能がない表計算ソフトでは早々に機能的限界に達してしまう。そこで、オープンソースソフト(OSS)でソフト開発自動化ツールの「Selenium(セレニウム)」をベースにした「STAR-Lite(スターライト)」を13年に完成さた。
SEは優雅に定時で帰宅すべし
「STAR-Lite」の完成と前後して、開発やテストを自動化し、ソフト開発の生産性を高めることを目指す「超高速開発コミュニティ」が立ち上がり、フロンテスもコミュニティの発足時からのメンバーとして参加。また、長野県のSIerのユリーカが中心となって今年4月に設立した「グローバルICTソリューションズ」にも参加し、ここに集うSIerの生産性向上にも役立ててもらう構えだ。
舟崎社長の想いは、とかく長時間労働が話題にのぼる日本のSEの仕事を“優雅にする”こと。開発とテストの担当者がタッグを組み、「STAR-Lite」のようなツールを活用すれば、急な仕様変更や、スマートフォン向けアプリに代表されるような常に開発し続けなければならないタイプのソフトウェアにも余裕をもって対応できる。従来のように手作業で動作確認しているようでは、生産性や品質も高まらず、増えるのは残業だけ。
自分たちの苦労を若い世代に押しつけるのではなく、そこで得たノウハウを還元して、SEがちゃんと定時に帰宅でき、より多くの報酬が得られるよう業務を改善していきたいと考えている。